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映画、テレビドラマなどの名場面生む北海道東部の絶景鉄道・釧網線の世界遺産への登録を

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映画、テレビドラマなどの名場面生む北海道東部の絶景鉄道・釧網線の世界遺産への登録を


オホーツク海の流氷、冬の湿原など、世界でも類のない景観の中を走る釧網線など北海道各地の鉄道沿線で、数々の映画、テレビドラマの名場面が生まれた。


そんな鉄路がこの半世紀、次々と姿を消してきた。釧網線でさえも存続が危うい。


だが、これを世界遺産に登録することで、「鉄道」を観光資源として捉えなおし、国の内外から観光客を集める。


そんな北海道にしていくことができないだろうか。


文/永山茂(釧路本線世界遺産登録推進会議会長)


オホーツク海のすぐ近くを走る流氷物語号 ©Hiroyuki Sebata
オホーツク海のすぐ近くを走る流氷物語号 ©Hiroyuki Sebata


厳冬期、流氷が接岸し青空が広がるとオホーツクには静寂が訪れる。


遠くに1両のディーゼルカー姿を現し、海岸線を走りながら近づいて来ると、白鳥の乱舞が出迎える。


やがてコトコトとスピード落とし、木造の北浜駅に止まる。同駅の前後の区間は、「世界で唯一車窓から流氷を見る事ができる鉄道路線」でもある。


 


北浜駅。駅舎内には喫茶店「停車場」がある
北浜駅。駅舎内には喫茶店「停車場」がある

「網走番外地」のロケ地、釧網線北浜駅、藻琴(もごと)駅


網走国定公園内に位置し、初夏には原生花園に咲く色とりどりの花に埋め尽くされる。


この駅は、隣の藻琴駅とともに高倉健(健さん)の出世作となった映画「網走番外地」(昭和40年=1965年公開)のロケ地として有名だ。


囚人たちが列車から降ろされて、トラックで網走刑務所に護送されるシーンに、当時のこれらの駅が登場する。


またこの映画では、手錠でつながったまま逃走した健さんら二人が、線路に伏せて、列車の車輪に手錠の鎖を切らせる名場面もこの付近で撮影されたようだ。


例年、流氷の時期に走る観光列車「流氷物語号」は、2018年は2月初めから3月初めまで、網走駅と知床斜里駅の間を運行した。観光列車ファンの中には、釧網線の冬のもう一つの名物である「SL冬の湿原号」を予約して、同じ日に両方を乗車した人も多かった。


昭和39年(1964年)・東海道新幹線開業当時の「全国鉄道路線図」の北海道東部の部分
昭和39年(1964年)・東海道新幹線開業当時の「全国鉄道路線図」の北海道東部の部分


昭和39年(1964年)・東海道新幹線開業当時の「全国鉄道路線図」は、映画「網走番外地」公開前年に作られた路線図である。


この1964年の地図では、網走駅から北西に湧網線が延びているが、今はない。網走駅から西へ向かう石北線は現存する。だが、64年の地図で、同線美幌駅から分岐していた相生線は、今はもう廃線になっている。同線北見駅から南に出て、根室線池田駅までを結んでいた池北線もすでに廃線になっている。


さて、「流氷物語号」の始発・終着駅だった知床斜里駅を、64年の地図で探すと「斜里駅」となっている。そしてそこから知床半島の途中まで、今はもうない根北線がのびる。


SL冬の湿原号が運行したのは、標茶駅と釧路駅の間だった。64年の地図では、その標茶駅から東に、これまた今はない標津線が表示されている。


昭和39年は総延長4000キロ。2500キロに縮小した北の鉄路


このように北海道全体で廃線が続いた結果どうなったか。東海道新幹線が東京・新大阪間で開通した54年前は約4000キロあった北海道の旧国鉄線の総延長は、現在のJR北海道線の総延長で約2500キロに縮小しているのだ。


車窓から、世界に比類がない「流氷観光」ができる。また、タンチョウヅルが遊ぶ釧路湿原の中を走る。釧網線は、網走国定公園、阿寒摩周国立公園、釧路湿原国立公園の3つを結び、自然や野生の動植物に触れる機会に恵まれた日本屈指の観光路線だ。国定、国立公園の中に線路があるのだが、一度線路をはがしてしまえば二度と復活できないだろう。


私は観光に携わる者として、日本中、世界中から釧網線を訪れる観光客に守ってもらえれば、と考えている。


スイスやオーストリアでは、美しい景観に囲まれ、また優れた技術を伝える鉄道が世界遺産に登録された例がある。世界にも類のない厳しくまた美しい自然環境の中を走る釧網線を維持してきた鉄道技術を検証すれば、登録の可能性が出てくるのではないか。


鉄道単体では収支が合わないかもしれない。だが、鉄道の魅力によって集まる観光客たちが沿線地域にもたらす巨大な経済効果、そこに鉄道の未来を見るべきだと思う。


 


釧網本線世界遺産登録推進会議


https://ja-jp.facebook.com/senmouhonsen


釧網線(SL冬の湿原号)関連ツアーはこちら

https://www.yomiuri-ryokou.co.jp/kokunai/search.aspx?c1=100&c2=2138


(出典:旅行読売臨時増刊「昭和の鉄道旅」、2018年7月18日発行)



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好評の「昭和の鉄道旅」(187月発行)の第2弾、旅行読売臨時増刊「昭和の鉄道旅 復活編」(定価1000円)が1030日に発売された。


北海道の鉄路の魅力を紹介する記事が合計36ページ。


永山茂さんが執筆した「北の駅舎、鉄路に“寅さん”の面影を追う」。永山さんが推進の中心となっている道南いさりび鉄道の観光列車「ながまれ海峡号」乗車ルポ。永山さんが代表を務める北海道鉄道観光資源研究会が「北海道専用国鉄特急」の保存を実現した現場、道の駅「あびらD51ステーション」ルポ記事など、多数の記事を収録している。


旅行読売臨時増刊「昭和の鉄道旅 復活編」
旅行読売臨時増刊「昭和の鉄道旅 復活編」 詳しくはhttps://www.ryokoyomiuri.co.jp/mook/post-54.html

Writer

永山茂 さん

1959年京都生まれ。札幌市内の旅行会社勤務のかたわら2014年に北海道鉄道観光資源研究会を設立し、代表に就任。「釧網本線世界遺産登録推進会議」会長も務める。