トキワ荘通りから雑司が谷へ。マンガ家たちの青春の地を歩く(3)
「トキワ荘跡地」モニュメント
トキワ荘通りにある「トキワ荘ゆかりの地」の看板を頼りに、路地に入ると、「トキワ荘跡地」モニュメントがあった。木造アパートのトキワ荘は昭和57年(1982年)に解体・改築され、その後、完全に取り壊された。
リノベーションで「賑わい」復活目指す商店街
「トキワ荘通り」に戻ると、緑色の日よけに書かれた「幸福書房」の文字が目に入った。この建物の中で、2018年10月からブックカフェ「幸福茶房」の営業がスタートした。店主の岩楯幸雄さんは「昭和52年(1977年)に、ここに妻や弟と家族経営の本屋を出した頃、この通りはそりゃあにぎやかでしたよ」と振り返る。岩楯さんは20年ほどでここの本屋を閉め、渋谷区に出店していた別の本屋経営に専念した。だが、渋谷区の本屋を18年2月に閉めたのを機に、トキワ荘通りのブックカフェとして再出発した。「(2020年3月に復活する)トキワ荘を見に来る人たちがひと休みする場所になればと思いましてね」とほほ笑む。
トキワ荘通りには、シャッターが下りたままの店舗があちこちにある。豊島区文化商工部マンガの聖地としまミュージアム担当課長の小椋瑞穂さんは、「地域活性化に協力する意向を持つ所有者も多いことが調査でわかっています。マンガ・アニメ関連のショップ、飲食・喫茶店などが増え、トキワ荘再現施設を中心に、歩いて楽しめる街になっていけば」と期待する。
リノベーションの事例はほかにもある。空き店舗を改装して2013年にオープンしたのが、「豊島区トキワ荘通りお休み処」(TEL03・6674・2518)。幸福書房から歩いてすぐの場所にあり、2階にはトキワ荘の一室が復元されている。
「お休み処」の一軒置いて隣りの空き店舗に2019年1月、シェアキッチンの「コマワリキッチン」がオープンした。自分で料理や菓子の店を開いてみたい人、料理教室やイベントをやってみたい人が、サポートを受けながら使える便利なスペースだ。
「トキワ荘」も、マンガ家たちが助け合ったり、先輩が後輩をサポートした、ある種のシェアオフィスだった。「トキワ荘」ゆかりの地らしい、新手のシェアビジネスだと言える。「今日は何を売っているかな」と、中をのぞいてみるのも楽しそうだ。
トキワ荘通りも、この付近から東は、「目白通り二又商店会」のエリアとなる。
(出典:「旅行読売」2019年2月号臨時増刊)