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東京・神楽坂のギャラリー前庭の「形のない図書館」で、聖地エルサレムの景色や音を体感する旅へ

場所
東京・神楽坂のギャラリー前庭の「形のない図書館」で、聖地エルサレムの景色や音を体感する旅へ

ライトアップされた「エルサレム 形のない図書館」(写真/岡野圭)


東京・神楽坂のAYUMI GALLERY前庭に「エルサレム 形のない図書館」という名のもとに、ポールが林立するインスタレーションが2020930日まで設置されている。

そして、なんとこの林立するポールに取り付けられたQRコードを介して、古来聖地として世界に知られる中東のエルサレムの景色や音楽を垣間見る、驚きの「旅体験」ができる。

インスタレーションはイスラエルの若手建築家リラハ・シタヤットさんとダニエル・ザルヒィさんによってデザインされた。


スマホでQRコードを読み取れば、聖地エルサレムの市場や通りの情景が目の前に

ポールは約200本。このうち約50本にQRコードがついている。それぞれにスマホをかざして読み取ると、エルサレムの異国情緒豊かな風景画像、市場や通りなどの動画が現れ、人々の話し声、騒音や音楽なども聞こえてきて、まるで現地を旅しているかのような感覚を楽しむことができる。


旅体験をするため、まずQRコードをスマホで読み取る(写真/岡野圭)
旅体験をするため、まずQRコードをスマホで読み取る(写真/岡野圭)

数千年の歴史を持ち、世界で最も古い都市の一つであるエルサレムは、円屋根(ドーム)が多いことで知られる。円屋根は旧市街だけで2048か所もある。

200本のポールは、それぞれが円屋根を象徴し、また庭全体が「エルサレム」の縮図となっている。庭の西側のポールにあるQRコードを読み取れば、エルサレム西部の景色・音、庭の東側のQRコードからは、エルサレム東部の景色・音が現われる。

インスタレーションはギャラリーの営業時間以外でも見ることができる。16時から22時まではライトアップされる。


インスタレーションは、エルサレムの縮図だ©Lila Chitayat | STUDIO LinC + STUDIOPEZ
インスタレーションは、エルサレムの縮図だ©Lila Chitayat | STUDIO LinC + STUDIOPEZ
QRコードはエルサレムの特定の場所にリンクする©Lila Chitayat | STUDIO LinC + STUDIOPEZ
QRコードはエルサレムの特定の場所にリンクする©Lila Chitayat | STUDIO LinC + STUDIOPEZ

建築家であり旅人でもあった故鈴木喜一氏がデザインした庭

故鈴木喜一氏が描いたエルサレムの風景。円屋根が印象的だ
故鈴木喜一氏が描いたエルサレムの風景。円屋根が印象的だ

この庭に「エルサレムと東京をつなぐ」インスタレーションが設置されたのには、この庭自体の成り立ちが深く関わっている。庭をデザインした建築家の故鈴木喜一氏は、世界中を巡り歩いた旅人だった。彼は、1981年の復活祭の頃、エルサレムを訪れた。そして、円屋根の連なる街の風景は、祝祭の雰囲気とあいまって彼に強い印象を与えたのだという。


昼間の「形のない図書館」(写真/岡野圭)
昼間の「形のない図書館」(写真/岡野圭)

インスタレーションの作品名「形のない図書館」にはどんな思いがこめられているだろうか。「図書館」とは本や雑誌などから知識を得る場所である。そこは、遠い地のさまざまな文化を体験する場所でもある。

つまり、神楽坂のギャラリーの前庭にいながらにして、数千年の歴史を積み重ねてきたエルサレムの、万華鏡のように変化する瞬間を垣間見る機会があるというわけだ。

神楽坂のギャラリーの庭の木の下やその周囲には、エルサレムの風景、言葉、騒音、音楽などをのぞき見る50ほどの窓が存在している。

このインスタレーションは、10月に開催された「デザイナートトウキョウ」での『エルサレム・デザイン・ウィーク』の出張展示の形だったこともあり、「デザイナートトウキョウ」終了後もインスタレーションは引き続き展示されている。『エルサレム・デザイン・ウィーク』はイスラエルでもっとも影響力のあるデザインイベントである。インスタレーションの詳細は下記のウェブサイトで

AYUMI GALLERY(東京都新宿区矢来町)

https://www.ayumi-g.com/

プロジェクト特設サイト

https://libraryofintangibles.com/

                ◇

話は飛ぶが、実際にエルサレムへ旅をするのが今年3月から便利になる。イスラエルのエル・アル航空が、成田空港からイスラエルのテルアビブへ直行便を就航させるからだ。エルサレムへの旅に興味がある向きは、神楽坂で少し予習をするのもいいかもしれない。


Writer

藤原善晴 さん

月刊「旅行読売」編集部に2019年12月まで勤務。現在読売新聞東京本社文化部。瀬戸内海が見晴らせる広島県安芸津町風早(現・東広島市)生まれ。レトロブームということもあり、最近は「昭和」という言葉に敏感に反応。また、故郷が「令和」の典拠となった万葉集ゆかりの地であるため、福岡県太宰府市、奈良県、富山県高岡市、鳥取県など各地の「万葉集」ゆかりのニュースにも目を光らせている。

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