ガウディへの旅(1)バルセロナから鉄道で聖地モンセラートへ
モンセラートの山頂はのこぎりの刃のように見える(写真/スペイン政府観光局)
スペイン東部カタルーニャの中心都市バルセロナのシンボル的な存在と言えば、独特の膨らみがある尖塔で知られるサグラダ・ファミリア(聖家族教会)など、天才的な建築家アントニ・ガウディ(1852年~1926年)が手がけた建築物群を思い起こす。
これらの建築物には、毎年世界中から膨大な数の観光客が訪れる。ガウディは、なぜ世界の多くの人々を魅了し続ける作品を生み出せたのか。
天才建築家ガウディが通い、芸術的霊感を得た聖なる山
「芸術におけるすべての回答」は「偉大なる自然」の中にある、との名言を残したガウディは、バルセロナ近郊の山上にある聖地モンセラートに何度も赴き、霊感を得たといわれる。ならば、見てみようと、バルセロナ中心部のエスパーニャ広場駅(地下駅)から、カタルーニャ州政府が運営するカタルーニャ鉄道R線に乗って、モンセラートを目指した。
R線は近郊住民の通勤・通学路線だが、朝は近郊から市中心部に向かう乗客が多く、逆方向の市中心部から近郊に向かう電車はそれほど混んではいない。電車はしばらく地下の線路を走った。1時間弱で、聖地モンセラートにある修道院近くまで行く登山電車への乗り換えができるモニストロル・デ・モンセラート駅に着いた。
一つ手前のアエリ・デ・モンセラート駅で下車すれば、ロープウエーも利用できる。だが今回、登山電車に決めたのは、モニストロル・デ・モンセラート駅で途中下車し、その近くにあるという絶景がたのしめるレストランで昼食をとるためもあった。
ガイドブック片手に、付近を20分ほどぶらぶらすると、川岸の崖の上にあるレストラン「ブラセリア・カン・イバルス」があった。川沿いのテーブルに着くと、対岸の家々や畑などが見渡せた。その背後にはこれから向かう山のシルエットが見える。ちょうど薄曇りの空から太陽の光が差してきた。聖地から降り注いで来る光のように思えた。
駅に戻り、緑色の車体の登山電車に乗る。山腹を縫うように登っていく。モンセラートの山頂まで続く巨大な岩々の迫力に圧倒される。モンセラート駅まで登り切るまでの20分ほどの時間が、あっという間に過ぎた。
出典:「旅行読売」2019年5月号