100回目を迎える弘前さくらまつり
毬のようなボリューム感に驚嘆の声
青森県弘前市の弘前公園は全国屈指の桜の名所として知られている。毎年4月下旬~5月上旬のゴールデンウィークには「弘前さくらまつり」が開かれ、園内は計200万人以上の花見客でごった返す。
弘前公園には約50種約2600本の桜が植えられているが、特に市民たちをして「日本一の桜」と胸を張らせているのが、枝にいくつもの小手毬がくっついているように見える、その圧倒的なボリューム感だ。そして、手で触れることができるくらい低い位置でほころんでいる、その距離感である。桜が満開の時期に弘前公園を訪れると、あちらこちらから「本当にすごいね」「こんなにきれいな桜は見たことがない」という県外から来た花見客の驚嘆の声が聞こえてくる。家族に車椅子を推してもらいながら「あの世に行く前に一度見ておきたかったの」としみじみ語る高齢の女性に出会ったこともある。
リンゴの栽培法を応用した「弘前方式」
この美しい桜は、「弘前方式」と呼ばれる方法で栽培・管理されている。弘前方式とは何か。全国一の生産量を誇るリンゴ栽培のノウハウを応用した管理法で、丁寧な施肥と剪定技術が特徴。先ほど、「弘前公園の桜は低い位置で咲く」と述べたが、その樹高の低さは栽培されたリンゴの木を思わせる。
弘前公園の桜を代表する風景といえば、赤い下乗橋とピンク色に咲く桜、そしてその向こう側に見える弘前城天守という構図だろう。だが、現在、天守は石垣の積み直し工事のため場所を移動しており、そのおなじみの光景を見ることはできない。
「その代わりに今ならではの風景を楽しんで下さい。それは天守と岩木山が絡んだ風景です。天守はまた石垣工事の進捗とともに元の位置に戻ります。そうしたら、この風景は見られなくなりますから」とは弘前市の関係者。それなら、「今ならではの風景を楽しもう」と思い直した。
インスタ映えと人気の花筏
最近は、満開の桜のほかに、散った花びらが堀の水面に浮かぶ様子を「花筏(はないかだ)」と呼び、それを撮影に訪れる観光客が後を絶たない。いわゆる「インスタ映え」を狙った人々だ。
今年の弘前さくらまつりは大正時代に始まった「第1回弘前観桜会」から数え、100回目の節目に当たるという。今年は4月23日~5月6日に開かれる。まつり期間中には、名物の「黒コンニャク」や「甘いたこやき」「嶽きみのてんぷら」を味わいながら、「日本一の桜」をまた愛でたいと思う。
(関係者によれば、天候により桜の開花が早まった場合は、「準まつり体制」として露店のオープンなどを早めて花見客のニーズに応えるという。)
問い合わせは弘前市立観光館(☎0172・37・5501)
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