東北桜巡礼(4)日本最古の現役鉄道橋から烏帽子山公園へ
四季の郷-荒砥駅間の最上川橋梁をラッピング列車が通る(写真/山形鉄道)
山形鉄道フラワー長井線の旅では、沿線の桜を楽しむだけでなく、貴重な“鉄道遺産”もしっかりと見ておきたい。
中でも見逃せないのが、四季の郷駅(白鷹町)から終点荒砥駅(同)の間にある最上川橋梁(通称荒砥鉄橋)だ。大正時代からこの場所に架かっているこの橋梁は、JR左沢線の最上川橋梁と並んで土木学会選奨土木遺産に選定されている。
また、これら二つの最上川橋梁は国内最古の現役鉄道橋でもある。さらに、「桜」と鉄道の写真を撮影するのに絶好のスポットとなっている。
四季の郷駅を過ぎてから、今か今かと最上川橋梁が見えるのを待つ。橋梁が見えてから通るまでの間に、過去にこの橋を通り過ぎた、様々な時代の様々な種類の列車の姿を想像した。
明治期の鉄道橋技術を今日に伝える最上川橋梁も「桜」撮影スポット
この二つの最上川橋梁が、土木学会選奨土木遺産に選定された理由は、明治期の貴重なダブルワーレントラス橋であるからだ。一般にトラス橋は桁(けた)部分にトラス構造を使った橋をいう。トラスは細長い部材を両端で三角形に繋いだ構造で、それを繰り返して桁をつくる。ダブルワーレントラス橋は、細長い部材をX字形に交差させた構造だ。
1887年(明治20年)から使用されていた東海道線木曽川橋梁(初代)が、2代目の橋が1914年(大正3年)に架設されたため、旧国鉄長井線(現・フラワー長井線)と左沢線の二つの最上川橋梁に分散移設された。移設は1921年(大正10年)〜1923年(大正12年)の期間に行われた。木曽川橋梁(初代)の設計はイギリス人で、イギリスから技術と資材を輸入して建設された。
荒砥駅から赤湯駅(南陽市)に戻る列車の中から、再度、最上川橋梁を見つめ、その姿をまぶたに焼き付けた。
その夜は南陽市の赤湯温泉。庭園に美しい桜が咲くことで知られる旅館「山形座瀧波」(TEL0238・43・6111)に泊まった。
山形座瀧波の3タイプの客室のうち、庭と桜をのぞむSAKURAタイプ全室、蔵をリノベーションしたKURAタイプの一部からは窓越しに、時期ともなれば桜の花が見える。
烏帽子山公園の「25種1000本」と称される桜の木々
翌早朝、旅館の六代目・須藤清市さんの案内で、朝食前の市内散歩に出かけ、36番札所の烏帽子山公園(南陽市)に登った。「25種1000本」と称される、おびただしい桜の木々は、前夜から降り積もった純白の雪に覆われていた。それはそれで美しかったが、桜の満開の時にも来るぞ、と心に決めた。