楽々ハイク 秩父で日の出と雲海を眺める①
●歩行距離4.8㌔ ●歩行時間3時間15分 ●難易度 低
日の出を見たくて宿坊に前泊
早朝4時、アラームが鳴った。地を打つ雨音が聞こえ、そのまま二度寝をと思いながら一応は窓を開けてみたが、雨。
ここは奥秩父の山中、標高1100㍍にある三峯神社の宿坊「興雲閣」。山上から日の出と雲海を眺めたくて前日入りしていた。翌日は快晴との予報だった。近年、都心から近い雲海スポットとして話題を集め、この日も個人客、ツアー客をあわせ200人以上が日の出前から境内に集まっていた。
境内を散策し新発見
夜明けが早く、それほど寒くないとはいえ、この時間帯にここまで来るのは、ちょっとつらい。そこで前日の昼過ぎに三峯神社にバスで着いて、のんびりと境内を散策した。開創より1900余年。雨に濡れた境内は趣深く、霧が漂う杉木立はここが神域であることを強調するかのよう。拝殿の彫刻は極彩色に富み、布袋尊や福禄寿の楽しげな様子は、見ていて飽きない。三峯神社では神の使いは狛犬ではなくオオカミ。境内に12対の像が祀られ、表情が異なる様子を見て歩くのも一興である。
大人になり、これだけ時間をかけて神社の建造物に見入ったことはない。こういった旅もいい。そんな新発見があったのも、ゆったりと前泊したからこそであろう。
宿坊の温泉に癒やされて
興雲閣へ戻って温泉でまったり。三峯神社社務所の隣にそびえる6階建ての宿坊で、一見、ホテルのように立派。6畳~10畳の計44室からなる。浴衣、歯ブラシ、タオル、バスタオルも用意してある。夕食は山の幸を盛り込んだ会席料理だ。大浴場に注ぐ温泉はナトリウムー塩化物泉で、適応症は切り傷、皮膚病など。
早めに床について迎えた朝が冒頭のくだりである。どれもかなわなかったが、もう一つの楽しみ、山歩きが待っている。
文/松田秀雄