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【旅する喫茶店】画廊喫茶ユトリロ(箱根)

場所
> 箱根町
【旅する喫茶店】画廊喫茶ユトリロ(箱根)

四谷シモンの人形、秋山祐徳太子の彫刻などの収集品も展示している

 

温泉街のモーリス・ユトリロの画廊喫茶

美術館が多い箱根は、喫茶店まで画廊のようだ。車が行き交う国道1号沿いに立つ、蔦(つた)が絡む洋風の建物に入ると、中は美術館の展示ホールのように天井が高く、クラシック音楽だけが聞こえる静かな空間が広がった。フランスの画家モーリス・ユトリロが淡い色で描いたパリの風景画が、白壁に何枚もつるされていて目をひかれた。

「昔から好きでした。クセがないから安心してずっと見ていられる」と話すのはオーナーの河野元枝さん。1975年創業の喫茶店を平成に入って建て替えたのは「絵を掛けたかったから」。こうして箱根に画廊喫茶が生まれて短くはない年月が流れた。

ユトリロの作品「サノワの風車」
ユトリロの作品「サノワの風車」
ユトリロ カレー
チキンと野菜を1週間じっくり煮込んで作る看板メニューのカレーライスとブレンドコーヒー

入り口からカウンターにかけて、各種コーヒー豆のビン、水出しコーヒー、サイフォン、ネルドリップの器具、焙煎(ばいせん)機が並んでいる。

サイフォンで濃いめのブレンドをいれてくれた昭二さんは、20年以上前に会社を辞め、母・元枝さんの店に戻ってきた。「理系で合理的な私と、芸術を愛する感覚派の母は、よくぶつかります。でも、根底では大切にするものは似ているんです」

話す間も、近所の常連さんたちが訪れ、コーヒーを飲んでいく。その居心地のよさはわかる気がする。大きなアーチ形の窓から差し込む光は、壁の油彩画の色のように柔らかく温もりがある。

文・写真/福崎圭介


画廊喫茶ユトリロ

住所:神奈川県箱根町湯本692

交通:箱根登山鉄道箱根湯本駅から徒歩3分

TEL:0460-85-7881

(出典 「旅行読売」2015年3月号)

(ウェブ掲載 2020年7月12日)


Writer

福崎圭介 さん

新潟県生まれ。広告制作や書籍編集などを経て月刊「旅行読売」編集部へ。編集部では、連載「旅する喫茶店」「駅舎のある風景」などを担当。旅先で喫茶店をチェックする習性があり、泊まりは湯治場風情の残る源泉かけ流しの温泉宿が好み。最近はリノベーションや地域再生に興味がある。趣味は映画・海外ドラマ鑑賞。

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