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【ロープウェイで夏絶景へ】箱根ロープウェイ

場所
> 箱根町
【ロープウェイで夏絶景へ】箱根ロープウェイ

眼下に大涌谷の谷底を眺めながら進むロープウェイ。その眺めは息をのむ大迫力だ

噴気立ち上る大涌谷や富士山を望む

絶景とは、非常に美しい景色。この定義に従えば、噴気を上げ、地獄谷とも呼ばれた箱根・大涌谷(おおわくだに)の景観は「絶景」の範疇からは外れよう。だが、「美しい」を「目を見張る」と言い換えるなら、その景観は圧倒的な自然のパワーを実感できる「絶景」の一つとなる。

東京方面から近くて人気の箱根を訪ねた。有名な温泉地だが、いろいろな乗り物を乗り継いで、童心に帰れるのも箱根観光の魅力だ。

玄関口の箱根湯本駅から箱根登山電車に乗り、急傾斜を上るためジグザクに方向転換しながら走るスイッチバックを体験。終点の強羅駅からは箱根登山ケーブルカーに乗り、早雲山駅に向かった。

早雲山駅の2階エリアは、2020年7月にオープンしたcu‒mo 箱根(クーモハコネ)。明るく、おしゃれな空間で、地元神奈川県産木材製のベンチの上には、雲の形のオブジェが見える。売店の一角では、観光客が名物のスムージー「ニューベル」を買い求めていた。早雲山の晴天に浮かぶ雲を表現したスイーツで、雲に見立てているのは綿アメ。女性たちが飲む前に、スマートフォンでしきりに撮影していた。

cu−mo箱根の内観。ベンチ には雲形のクッション(オブジェ)も

「クーモは、早雲山駅を大涌谷に行くための単なる乗り換え地点から、大涌谷に向かう旅の高揚感を盛り上げる場所になるように考案されました。テラスゾーンには、足湯もありますよ」と語るのは、箱根登山鉄道索道部の勝俣武仁さん。クーモとは、箱根の森の木と、早雲山の雲に由来するという。

風に強い3代目ゴンドラへ

いよいよ、ゴンドラ(定員18人)に乗り込む。約4キロの空の旅の始まりだ。

箱根ロープウェイは、一般のロープウェイのように山麓と山頂を直線で結ぶ形式ではなく、両端の早雲山駅(標高757メートル)と桃源台駅(同741メートル)の間に、大涌谷駅(同1044メートル)と姥子(うばこ)駅(同878メートル)という中間駅を設けているのが特徴だ。

現在のゴンドラは3代目で、鹿の角のような2本のアームが幅広に張られたロープをしっかりつかんで進む複式単線自動循環式フニテル方式。「風に強いフニテル化で、それまで年間30日ほどあった運休が10日ほどに減少した」(勝俣さん)という。ちなみに、初代と2代目のゴンドラは、姥子駅の駅舎脇に展示されているので、立ち寄って見学したい。

姥子駅に隣接したゴンドラ庭園には、初代と2代目のゴンドラが展示されていて、現在運行中のゴンドラとの違いを理解できる

話をゴンドラに乗った時まで戻そう。私たちが乗り込んだゴンドラは斜面を駆け上がるようにぐんぐんと上へ。そして早雲山駅から4本目の支柱を過ぎた時だ。ゴンドラ内に「わー、すごい!」「おー!」という歓声が沸いた。大涌谷に差し掛かったのだ。約130メートル下の谷底の所々に噴気が上がっているのが見える。黄色く見えるのはイオウだ。硫化水素臭が鼻を突いたが、それが気にならないほどの圧倒的な景観に見入った。

晴れて雲のない日には、この辺りから右側に富士山がよく見える。当日は、雲が多くて富士山の一部しか見ることができなかったが、それでも満足感が込み上げた。

晴れた日には、ロープウェイから富士山を眺められる(写真/箱根ロープウェイ)

大涌谷駅でゴンドラを降り、箱根ジオミュージアムで、大涌谷の成り立ちや、大涌谷地域に温泉を安定供給するために、噴出する火山性蒸気を貯水池の水と混ぜ合わせて温泉を造成する仕組みを知る。また、大涌谷自然研究路の引率入場に参加し、名物「黒たまご」を作る工程も見学した。

自然研究路の「たまご蒸し場」では、毎日、大涌谷名物の黒たまごが作られている

大涌谷駅に戻り、※今度は桃源台駅行きのゴンドラに乗る。右手に富士山の稜線、左手に芦ノ湖を眺めながら、姥子駅を経由して桃源台駅へ。駅前の港から箱根海賊船に乗って芦ノ湖遊覧を満喫し、今回の乗り継ぎ旅を締めくくった。

※ 箱根ロープウェイは、「早雲山―大涌谷駅間」と「大涌谷―桃源台駅間」の2本の路線で構成されている。早雲山駅から桃源台駅へは、大涌谷駅で乗り換えが必要。

文/松本浩行 写真/坂田 隆


cu-mo箱根(物販)
10時~16時(土・日曜、祝日は~17時)/不定休/TEL 0465-32-2207(箱根登山鉄道施設事業部)

大涌谷引率入場
1日4回(予約制、各回定員30人、約40分間)/協力金500円/予約はウェブサイト(https://www.hakone.or.jp/od-booking/) /TEL 0460-84-5201(大涌谷インフォメーションセンター)

箱根ジオミュージアム
9時~16時/無休/100円/TEL 0460-83-8140 

箱根海賊船
9時~17時(出航時間は、ウェブサイト「箱根ナビ」で要確認)/無休/片道1200円(桃源台港―箱根町港・元箱根港)/TEL 0460-83-6325(箱根観光船運航部)

 

(出典:旅行読売2022年8月号掲載)

(WEB掲載:2022年7月28日)


Writer

松本浩行 さん

月刊「旅行読売」の元編集長。在任期間は、2020年3月号から2022年9月号まで。

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