ゆったり、とっとり日本遺産さんぽ2 ~大山町、伯耆町、江府町、米子市~
大山隠岐国立公園の核をなし、美しい雄姿を見せる大山、手前が現在の博労座
地蔵信仰が育んだ日本最大の大山牛馬
大山町、伯耆町、江府町にまたがってそびえる霊峰・大山。標高1729メートル、中国地方最高峰であり、その山容の美しさから伯耆富士とも称される。親しみと尊敬を込めて、地元では「大山さん」と呼ばれている。
古くより修験道の聖地で、中腹には天台宗・大山寺を中心とした門前町を形成。地蔵菩薩が大山の山頂に現れたということから、地蔵信仰が盛んになって いく。
万物を救うとされる地蔵信仰から農耕や運搬に欠かせない牛馬の加護を願う人たちが、牛馬を曳き連れて参詣に訪れた。参詣者の間で、次第に牛馬の交換や売買が始まり、江戸時代中期に大山寺の庇護を受けて 「大山牛馬市」 が隆盛を極める。
大山寺境内の入り口にあたる広大な草地が牛馬市取引会場の博労座(ばくろうざ)と定められた。明治時代には、年間1万頭以上が取引される日本最大の牛馬市へと発展する。
通称「大山道(だいせんみち)」と呼ばれる参詣道も複数整備された。中世の尾高城 (現・米子市尾高地域)・近世の米子城下町との主要道 「尾高道」、大山の代官所があった丸山を起点とする「丸山道」、淀江港を結んだ「坊領道」などだ。沿道では、今もところどころに古い景観をとどめる。
ブナ林が広がる厳かな自然の中、古道を歩き、脈々と受け継がれる大山の歴史に思いを馳せてみたい。
博労たちからも好まれてきた名物の「大山そば」や「大山おこわ」、大山の原初信仰を伝える「もひとり神事」(県の無形民俗文化財)、精進潔斎を祈る伯耆町硯ヶ池の「はまなんご神事」など食や神事も日本遺産の構成文化財であり、巡る楽しみは尽きない。
大正時代、牛馬市で取引された県産牛を中心に日本初の登録事業(戸籍管理)が開始され、肉牛の品種改良に大きく寄与。鉄道の敷設とい っ た時代の流れから牛馬市は1937年に幕を閉じたが、今世界が注目する「和牛」誕生への礎となった。ブラ ンド牛の「鳥取和牛」は、和牛の品評会「全国和牛能力共進会」で肉質日本一になった実績もある。
”大山さんのおかげ” 。多くの恵みを授けてくれる大山への感謝の念が、人々の心に今も息づいている。
大山ご縁地蔵作りと日本遺産ガイドツアー
博労座にある大山町観光案内所では、かわいらしい粘土のお地蔵さま工作体験(所要約1時間30分)ができる。大山寺とその周辺のブナ林を散策する日本遺産ガイドツアー(所要約1時間)も実施。手作りのお地蔵さまとガイドの楽しくてためになる話をお土産に持ち帰ろう。お地蔵さま工作体験のみ1500円、工作体験+ガイドツアー付きプラン3000円/3日前までに要予約/TEL0859-48-6123(大山ツアーデスク)。
(ウェブ掲載 2020年7月23日)
博労座へのアクセス
山陰線米子駅から大山寺行きバス55分、終点下車/米子道米子ICから県道 24号経由13キロ