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【添乗員日記】2020年1月、14日間の南極船旅詳細レポート

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【添乗員日記】2020年1月、14日間の南極船旅詳細レポート

■2020年1月9日(木)成田→米国・中東乗継→ブエノスアイレス
さあ、いよいよ南極への船旅へ! 全国各地よりお客さまに集合いただき、成田から米国内都市または中東経由で、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスへ。米国都市までは約12時間、そしてさらにブエノスアイレスまで約10時間、長い道のりを期待に胸ふくらませ旅立ちました。

■1月10日(金)ブエノスアイレス市内観光
午前にブエノスアイレスに到着。気温は20℃近くで、この時期のブエノスアイレスにしては、比較的過ごしやすい気候でした。昼食は地元の人気レストラン「ラス・ナサレニャス」にてアサード(牛炭火焼ステーキ)やエンパナーダ(南米風ミートパイ)を食します。ステーキの大きさには驚きでした!

午後からはブエノスアイレス市内観光へ。タンゴ発祥の地と言われるボカ地区のカラフルな街並み「カミニート」、英雄ペロン元大統領夫人エビータの墓をはじめ多くの著名人も眠る「レコレータ墓地」、大統領府カサ・ロサーダのあるマヨ広場を訪れ、ブエノスアイレスの歴史を感じました。観光後はホテルへ。ビュッフェの夕食後、皆さまには長旅の疲れもありながらお休みいただきました。

■1月11日(土)ブエノスアイレス→ウシュアイア→出港
早朝にバスでブエノスアイレスより南極への玄関口ウシュアイアへ。いよいよ今日は乗船日です! 乗船時間までウシュアイアの街を散策。街のメインストリート「サンマルタン通り」ではカフェやレストランはもちろん、ペンギングッズや絵葉書など地元のお土産店など自由散策をお楽しみいただきました。

そしていよいよ乗船し、出港! 船内生活オリエンテーションや避難訓練、翌日からの船外活動で着用するパルカや長靴を受取、早めにお休みいただきました。ドレーク海峡は例年よりも穏やかで、船もスムーズに進んでいきました。

■1月12日(日)終日航海
引き続き比較的穏やかなドレーク海峡を南極大陸へ向け南進していきます。今日から船内生活が本格的に始まります。船内での楽しみでもあるワールド・エクスプローラーのお食事は朝、昼はビュッフェ、夜はコースディナーです。チャータークルーズのため日本人シェフが同行し毎日朝はおかゆ、お味噌汁、昼はうどんやそば、夜はちらし寿司やカレーなども。

日中は船外活動に向けてペンギン・クジラについて、また写真の撮り方のポイント、南極条約や南極の歴史に関する講座に参加していただき、知識や興味を深めます。

夜は船長主催のカクテルパーティーで乾杯! 船長以下スタッフ全員の紹介もあり、盛り上がりました。予想よりも早くドレーク海峡を通過できたため、翌日はなんと午後に早速、初めての船外活動ができることに! 明日への期待が膨らみます。

■1月13日(月)フォートポイント/グリニッジ島
南極の玄関口、サウスシェトランド諸島に入ってきました。探検リーダーから「南極上陸に関する注意事項とソディアックボートに関するご案内」があり、全員がこの講義を経て、初めて南極への上陸が許可されます。期待に胸を膨らませながら、身に着ける衣服や帽子などのクリーニングを済ませ、準備を進めます。

そしてお待ちかね、午後からは初めての船外活動へ。装備をしてゾディアックボート(探検用小型艇)へ初めて乗る瞬間は、皆さま恐る恐る足を踏み入れていらっしゃいましたね。外は天気に恵まれパルカを着ていると暑く感じるほどでした。サウスシェトランド諸島中央部のグリニッジ島フォートポイントへ。ゼンツーペンギンとヒゲペンギンの営巣地で、着いた瞬間波打ち際から奥の岩場まで無数のペンギンたちで溢れています。なんと! ラッキーなことに1羽だけマカロニペンギンが! どこにいる? とお互い教え合い、皆写真におさめていました。

そして、毎日船外活動の後は今日のおさらいをスタッフや講師の先生よりお話いただき、動物や上陸ポイントの歴史、特徴を振り返りました。予想よりスムーズに進んだため、探検リーダーのアリさんも「ラッキーなボーナス上陸」と言うくらい貴重な上陸でした。

■1月14日(火)ブラウン・ブラフ→ポーレット島
今日も穏やかな天気に恵まれ2回の上陸ができました。まず午前中は火山活動の後に風などの浸食でできた赤茶色の断崖ブラウン・ブラフへ。南極大陸初上陸を果たしました!

上陸時には記念写真も撮りましたね。3万羽を超えるアデリーペンギンの営巣地で、皆さまの足元すぐ近くにもペンギンたちが近づいてきました。列をなして次々と氷の上から恐る恐る海に飛び込むアデリーペンギンたちがかわいくてたまりません。途中クルージングでは氷の上でペンギンたちが寝転がっている姿も見えました。

午後からは南極半島の北端からウェッデル海に入ったところにあるポーレット島へ。こちらも約10万つがいのアデリーペンギンの営巣地であり、また大多数のペンギンたちの姿に圧倒されます。スウェーデンのノルデンショルド隊が1901〜04年にかけて越冬した石小屋跡もありました。

夜にはラウンジで探検ガイド・マーク先生の飛行機なしで2000日間世界一周という珍しい体験もお話いただきました。

■1月15日(水)シェルバ・コーブ→ウィルヘルミナ湾
霧が立ち込めた朝、天気が心配されましたが、午前は少し靄がかった幻想的な景色の中、シェルバ・コーブでゾディアック・クルージングです。アルゼンチンの夏の観測基地があり周辺には苔などが見られる科学保護区となっています。これまでの上陸観光とはまた違いクルージングのみで景色を堪能しました。

氷河で一旦ボートのエンジンを止めしばらく静かに氷のはじける音、氷河の崩れる音に耳をそばだてます。海のギャングとも言われるヒョウアザラシが穏やかに氷の上に横たわっていました。

氷山を回避しながら午後は南極半島の西岸に切り込んだウィルヘルミナ湾へ。ほぼ夕方近くになりましたが、ホエールウォッチングとして有名なスポットでもゾディアック・クルージングをお楽しみいただきました。

またこの日は、南極キャンプ体験ご参加の方は早めの夕食を済ませ、ゾディアックボートでロンジエ島に渡り、各自で雪の上に寝袋をセッティングし、その中で一夜を過ごします。大自然を感じながら寝袋の中から底冷えしてなかなか寝つけません。熟睡できた方もそうでない方も……貴重な体験をされました。なんと、あるお客さまのすぐ近くでアザラシが横たわってグーグーと熟睡していました! 翌朝は5時頃に起床し、寝袋を片付けて無事に本船へ戻りました。

■1月16日(木)ネコハーバー→メルキオール諸島
20世紀初頭に活躍したノルウェーの捕鯨母船ネコ号にちなんで名付けられたネコハーバーへ。クルージング中は氷山の上にカニクイアザラシやヒョウアザラシが寝そべっていました。

2回目の南極大陸上陸を果たすと、海岸近くからゼンツーペンギンの営巣地が見えます。高低差100メートルほどある丘を登ります。南極ではペンギンの通り道はペンギンが優先です。遮って通行しないように気をつけながら巣と海を一生懸命往復する子育て真っ最中のペンギン、そして気持ち良さそうに寝ているウェッデルアザラシの姿をお楽しみいただきました。

さらに午後からは青空見え絶好のクルージング日和になりました。メルキオール諸島は1903〜05年にこの海域をフランスの探検家シャルコーが測量し時の海軍副大臣の名がついた美しい島々です。

早い海流や外洋のうねりが届かない島影をゆっくりとクルージング。途中ウェッデルアザラシも寝そべっていました。また、夕方から「ポーラープランジ」というワールド・エクスプローラーの下船口より氷の浮かぶ海に飛び込む大会も開かれました。参加者はそれぞれ思いっきりジャンプ! その姿に歓声があがりました。南極海の冷たさを体感できる貴重な体験を満喫されました。

夕食前には海に浮かんでいた南極氷を使ったウイスキーのオンザロックを味わっていただきました。耳を近づけると氷の気泡がはじけ、パチパチと音が聞こえます。はるか昔の空気が蘇ると感慨深くより一層美味しい一杯となりました。

■1月17日(金)ポート・ロックロイ・ジュグラーポイント→ルメール海峡→ピーターマン島
あっという間に南極最終観光日がやって来ました。ノイマイヤー海峡を通過し、快晴の中、午前はゴーティエ島に位置するイギリス観測基地だったポート・ロックロイに上陸します。上陸地周辺にはゼンツーペンギンが所狭しと歩いています。

ここは南極観光の中でも有名なスポットで、現在は博物館と郵便局及び売店が併設されている建物の中には、当時の台所や寝室、作業場などが狭い空間に詰まっています。売店では絵葉書と切手を購入し、ご自宅やお友達に投函することもできます。Tシャツや帽子、バッグなどかわいらしい小物もたくさんありここでしか買えないお土産を品定めされていました。

ポート・ロックロイから背後に雄大なセブンシスターズの峰が見えるジュグラーポイントにも行きました。ゼンツーペンギンが岩場を歩き、捕鯨で打ち捨てられた鯨の骨もゴロゴロと転がっていました。午後は、南極半島で最も雄大とされるルメール海峡の景色をデッキからご覧おただき、青々と澄んだ氷河をバックに全員で記念写真を撮りました。いくら見ても飽きない壮大な風景を360℃に讃えてクルージング。これ以上の贅沢はないという絶景でした。

そして最後に最南端ピーターマン島へ上陸を果たしました。フランスの探検家シャルコーが自身の船の係留地の岩に彫り残した「P.P(探検船プルクア・パー号の頭文字)」をボート上からも確認できました。

上陸地では小高い丘を登り、アデリーペンギン、ゼンツーペンギンもここで見納めです。しっかりと写真だけでなく目に焼き付けて本船へ戻りました。

夕食はプールデッキでバーベキュー。レストランスタッフたちがジューシーなお肉を目の前で焼いてくれます。軽食からデザートまでビュッフェ形式で、氷河の景色やルメール海峡を両舷に絶景を楽しみながら盛り上がり、解放感あふれるひとときでした!

■1月18日(土)~1月19日(日)終日航海
船外活動が終わり、2日間の終日航海に入りました。船内でゆっくりと過ごす時間も増え、これまでの船外活動を踏まえてペンギンやアザラシ、地球温暖化、南極探検の英雄「アーネスト・シャクルトン」に関して先生方の講座にご参加いただきました。船内の売店では、地図やキーホルダーをはじめ南極グッズも豊富で、絵はがきを購入し、多くの方が船内のポストに投函されていました。長い時は半年以上かかるそうですが、届くのが楽しみですね。

メインイベントともいえる南極オークションでは船長も利用されている航海図など特別な商品が出品されていました。売上は全てペンギンたちの保護に使われるということです。

皆さまにとっておきの写真データをご提供いただいたUSB作りもいよいよ終盤。画像取り込み用のパソコンに写真データを投稿いただき、素晴らしい思い出集が出来ました。

往路は穏やかだったドレーク海峡も復路は波も高く荷物の整理も時間がかかりました。船上からの景色にも氷山が少しずつ減り始め、南極ともいよいよお別れで少し寂しい気持ちになりました。午後は、北極の新たな極地クルーズのご案内があり、「次は北極点に行ってみたい」と興味を持った方もいらっしゃいました。

船長主催のさよならパーティーでは皆さまが旅の思い出を分かち合い、10日間ご一緒に過ごされたこともあり各テーブル話が盛り上がっていました。

■1月20日(月)~1月22日(水)ウシュアイア→ブエノスアイレス→米国・中東経由→成田
船内で最後の朝食をお取りいただき、今回の旅の思い出の詰まったフォトジャーナルとパスポートを受け取ると、10日間お過ごしいただいたワールド・エクスプローラーともお別れです。

2019年就航の新造船のクルーズ船ということで快適な船内の旅でしたね。探検スタッフとも最後のお別れをし、飛行機までの時間はウシュアイアの半日観光と昼食へ。

フエゴ島国立公園では世界の果て号にご乗車頂き野生動物も見ることができました。刑務所の人員移動や木材運搬などの機能を果たす鉄道の名残を感じる景色でした。その後の昼食は牛やラムのボリューミーなバーベキューを召し上がっていただき空港へ移動、いよいよウシュアイアの街を出発です。仲良くなったお客さま同士が旅の最後の別れを惜しみ、お互いにご挨拶をされていました。最後は無事に成田空港へ帰着。

今回はお天気に恵まれ計9回も船外活動にご参加いただきました。天候に左右されることなくすべて無事に活動して頂けることは奇跡に近いそうです。皆さまと南極での貴重な時間を共有でき、また多大なるご協力のおかげで、何事もなく無事に旅行を終えることができましたこと、改めまして感謝申し上げます。ありがとうございました。

またどこかで皆様とご一緒できるのを楽しみにしております。

読売旅行/御厨 瞳


Writer

たびよみ編集部 さん

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