【添乗員日記】天候や氷の状況に合わせて決める観光ルート
南極といえば、なんといっても大自然! 間近で見ることのできる野生動物は、どこの動物園にも負けません。「一生分の動物を見た」とおっしゃっている方もいらっしゃいました。
ただし、動物園とは違い、かわいいだけではありません。ペンギンのヒナを狙う鳥、それを必死に阻止する親ペンギン、ペンギンを追いかけるアザラシなど、どの動物も生きるために必死です。傷だらけのペンギンやアザラシを見ることも少なくありません。過酷な状況でも必死に生きる動物たちを見て、みんないろいろなことを思ったことでしょう。
舗装された道路や建築物を見るわけではないので、その瞬間その瞬間、新しい発見がたくさんあります。二度と同じ瞬間には出会えません。その瞬間を逃すまい、とたくさん写真を撮ったり、目に焼き付けていきます。
私は一度上陸観光中、ミシミシと音を立てながら大きな氷が崩れていくのを目撃しました。大きな塊の氷は海に飲み込まれ、その反動で津波となり、こちらに向かってきます。ペンギンなどの野生動物が危険を察知し上陸し、逃げたところで津波がぶつかってきました。写真で見る美しい自然とは違い、危険と隣り合わせの怖さを感じました。
このような危険な場合もあるため、天候や、氷の状況に合わせて明日どこに行くかが決まります。事前に観光ルートを決めていくことはありません。上陸ポイントに行っても、風が強かったり、氷が多かったり、野生動物が多すぎたりして、観光中止となり、別のポイントに移動することも少なくありません。
私たち添乗員が同じ場所を何度訪れても、同じ光景を目にすることは絶対にありません。これが、南極の自然の偉大さです。
読売旅行/野村 彩乃