南極への玄関口、ウシュアイアの町

南極にはどうやって行くのか？　世界地図を見ると、オーストラリアの下に南極があるので、その方法を探してみると「ニュージーランド・インバーカーギル」から船で行く方法があります。南極観測隊がとる航路などが該当しますが、個人で行く場合、船に乗ってからの距離が4,810㎞ほどあり、時間と費用がかかります。

実際、世界中の南極ツアーのほとんどは南米からのアクセスです。

一つは空路で向かう方法。チリ・プンタアレナスから南極のキングジョージ島行きの飛行機が出ており、２時間程度で到着。キングジョージ島から南極クルーズ船に乗船します。また、南極の内陸部・ユニオンブレーシャーベースキャンプまでの空路もあり、その場合は約４時間15分で到着します。

もう一つは航路で向かう方法。アルゼンチン・ウシュアイアは、南極大陸から1,000㎞。南極に最も近い場所です。東京からウシュアイアまでの距離は約17,000キロですが、船に揺られること２日間で南極へ到着します。

ウシュアイアはアルゼンチンの最南端の都市です。フエゴ島に位置し、ティエラ・デル・フエゴの州都。ティエラ・デル・フエゴとは、火の土地を意味し、昔、先住民たちが焚く火が島のあちこちに見えた事に由来しています。この町は20世紀前半には、凶悪犯の流刑地となっていた歴史があります。今では「地の果て」と呼ばれ、夏ともなると港に大型のクルーズ船が一度に何隻も停泊するなど、南極観光の拠点として世界中からの多くの観光客が訪れます。

この町の人口は約７万人程ですが、多くの観光客で賑わいを見せます。町のメインストリートは、約1.3㎞のサンマルタン通りです。レストラン、カフェ、ギフトショップ、アウトドアショップなど軒を並べています。パタゴニア名物の羊やビーフのアサード（焼肉料理）やアルゼンチンワインを提供しているお店もあります。尚、治安は、ブエノスアイレスなどと比較すると各段に良く、夜遅くまで外国人観光客でレストランやバーは賑わっています。

アルゼンチンの公用語はスペイン語ですが、ウシュアイアでは同じスペイン語と言えどもだいぶ異なっているそうです。残念ながら英語はあまり通じませんが、主な観光スポットやホテル、レストランなどでは英語表記もあり、英語の通じるスタッフが常駐していることも多くなっています。ホテルでの宿泊、お店での食事や買い物程度でしたら大きな支障はないように感じます。

市内には、先住民族やかつてのウシュアイア周辺を紹介している「世界の果て博物館 ティエラ・デル・フエゴ」や、監獄として使われた当時の歴史から現代アートまで展示をしている「元監獄と船舶博物館」、 先住民族のうちヤマナ族（ヤーガン族）を主に紹介している「ムンド・ヤマナ博物館」などがあります。

郊外の見どころは、ウシュアイアの西方11㎞のチリとの国境に広がるティエラ・デル・フエゴ国立公園。アメリカ大陸を横断するパンアメリカンハイウェイの最南端地点のラパタイア湾などを訪れフエゴ島の大自然を満喫します。公園内を走る観光列車「世界の果て号」は、ウシュアイアの刑務所建設の木材を運んでいた列車です。列車からは、樹木の伐採跡地やマカレナ滝、泥炭など公園内の景色をお楽しみいただけます。観光列車の乗車時間は、約50分です。

万年雪をかぶったマルティアル山脈の麓にあるウシュアイアの町からは、ビーグル水道が広がっています。ビーグル水道ではウミウのコロニーやたくさんのオタリア（南米のアシカ）を目の前で観察できます。このビーグル水道から南極への船旅が始まります。

読売旅行／児玉 旭功