日本平夢テラスから眺める、この時期だけの富士の絶景(2)
御前崎方面の夕映えから南アルプスの山並みをシルエットに静岡市街の夜景を望む
法隆寺にヒントを得た八角形のユニークな建物
建築物としての日本平夢テラスも見事だ。設計は、東京五輪のメイン会場、国立競技場を手がけた隈研吾(くまけんご)建築都市設計事務所。法隆寺夢殿にヒントを得たという八角形の建物は、静岡県産のヒノキで組んだ屋根など木材をふんだんに使い、自然景観との調和を図っている。館内から見上げると複雑に組まれた天井の梁に幻惑される。
展望フロアの外周とつなげて8の字を描くように、隣接の日本平デジタルタワー(電波塔)を取り囲んで展望回廊のデッキが巡っている。展望回廊からは八角形の屋根をかすめて富士山が見える。駿河(するが)湾を挟んで伊豆半島も見え、伊豆は山地が大部分を占めているのを実感できる。御前崎方面から南アルプスも一望のもとだ。
風景を360度見渡せるのがこの施設の特徴で、写真や絵画のように切り取られた風景ではなく、眼前に一大パノラマが展開されるさまは圧巻だ。
山並みをシルエットに輝くパノラマ夜景
絶景は昼だけではない。夢テラスができる前から日本平は夜景観光コンベンション・ビューロー制定の日本夜景遺産に認定されている。黒い山塊をバックに清水港が煌々と明かりに照らされる光景が印象的だ。展望回廊は終日上れるので、暗くなればいつでも夜景を堪能できる。土曜は入館できる21時まで2階ラウンジも営業している。地元産の温かい日本平煎茶などを飲みながら、寒さをしのいでガラス越しに夜景を眺めるのもいい。
ラウンジの壁に、「富士に恋して」と題したわたせせいぞう氏のイラストが飾られていた。わたせ氏らしい鮮やかな色彩と洗練された画風で、富士山と桜を背景に若いカップルが描かれている。駐車場から夢テラスへ至るスロープの片側には桜並木がある。春になれば、この絵のような風景にも出会えるだろう。
文/田辺英彦 写真/青谷 慶
住所:静岡県静岡市清水区草薙600-1
交通:東海道新幹線静岡駅から日本平ロープウェイ行きバス40分、日本平夢テラス入口下車徒歩5分(または東海道線東静岡駅から同バス25分)/東名高速清水ICから12㌔
TEL:054-340-1172
(出典「旅行読売」2021年2月号)
(ウェブ掲載 2021年3月25日)