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【ひとり終着駅へ】上田電鉄別所線 別所温泉駅(1)

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【ひとり終着駅へ】上田電鉄別所線 別所温泉駅(1)

1921年に別所駅として開業し、24年に信濃別所駅へ、30年に別所温泉駅へと改称

千曲川を越えて、大正ロマン薫る駅を目指す

閉塞感が漂う日々のなかでも、うれしいニュースはあるものだ。2021年3月28日、長野県東部を走る上田電鉄別所線が全線開通の日を迎えた。台風と川の増水によって崩落した千曲(ちくま)川橋梁の姿に、心を痛めた鉄道ファンは多いだろう。あれから1年3か月が経った(掲載時)。

「落橋当時、復旧は見えず、不通区間の対応に必死でした。ようやく見慣れた橋の姿が戻ってきて、再びご利用いただける日がきました」と上田電鉄運輸部の渡邉慧(さとし)さん。別所線の始発駅である上田駅までは、東京駅から北陸新幹線で1時間半。日帰りも可能だが、終着駅には信州最古の温泉が待つ。ひとりのんびり、ローカル線と湯三昧の旅を楽しみたい。

6月17日で開業100周年となる別所線は、上田駅から別所温泉駅までの11・6㌔をおよそ30分で結んでいる。今回は旅の目的に合わせて、往復乗車券と別所温泉の外湯2か所の入浴券がセットになった外湯入浴券付き切符1290円を購入。取材時は、千曲川橋梁を含む上田― 城下(しろした)駅間は代行バスが運行していたが、現在は復旧済みだ。城下駅を出た列車はしばらく、市街地の中を西へと向かう。車両は1000系と6000系の2種・5編成で、元東急電鉄車両が活用されている。

駅名標
湯めぐりが楽しめる終点駅の別所温泉駅
千曲川橋梁
上田駅を出てすぐに渡る千曲川橋梁は「赤い鉄橋」として親しまれてきた。2018年4月撮影

塩田平の田園地帯をゆく

上田原駅を過ぎると進路は南へ。車窓に田畑が増え始め、遠くに独鈷山(とっこさん)などの山並みが見えてくる。神畑(かばたけ)駅周辺は果樹畑が多く、4月下旬〜5月上旬にリンゴの花が咲くという。大学前駅は三つの大学の最寄り駅で、上田女子短期大学の学生が務めるボランティアガイドは、車内で沿線の観光情報を伝えてきた。新型コロナウイルスの影響で休止中だが、再開されれば車内が華やぐことだろう。

車両基地のある下之郷(しものごう)駅から徒歩5分の生島足島(いくしまたるしま)神社は、「延喜式(えんぎしき) 」にも載る古社だ。別所線の走る地域は、塩田平(しおだだいら)と呼ばれる千曲川左岸の河岸段丘で、のどかな田園地帯に古社寺が点在。2020年6月、日本遺産に認定された「信州上田・塩田平」の構成文化財には、別所温泉の寺社や別所線の鉄道施設も含まれている。

下之郷駅を出た列車は再び西を目指す。ミントグリーン色の木造駅舎が目を引く中塩田駅や八木沢駅を過ぎると、鉄路は傾斜にさしかかり、終点までは40パーミルの上り坂。別所温泉駅に到着すれば、袴(はかま)姿の観光駅長が出迎えてくれる。大正ロマンが漂う木造駅舎は、待合室の天井も高く、クラシックな雰囲気。4月中旬〜下旬には桜、5月中旬〜6月上旬にはツツジが駅の周辺を彩る。

文/内山沙希子

【ひとり終着駅へ】上田電鉄別所線 別所温泉駅(2)

駅長
別所温泉駅の観光駅長は袴姿。大正時代に開業した駅舎の雰囲気によく合う
展示
「丸窓電車」の愛称を持つモハ5250形。別所温泉駅など3か所で保存・展示

上田電鉄別所線

1921年に青木線(三好町―青木駅間)、川西線(上田原―別所駅間)が営業開始。24年に川西線(上田―三好町駅間)が営業開始。39年、別所線に線名変更。

問い合わせ:0268-71-6074(信州上田観光協会)

(出典「旅行読売」2021年4月号)

(ウェブ掲載2021年6月22日)



Writer

内山沙希子 さん

京都生まれ。本や雑誌を作る仕事を求め、大学在学中に上京。その後、美術館やレストラン、温泉宿、花名所、紅葉名所等のガイドブックを中心に、雑誌や書籍の企画・編集に携わる。2017年頃から月刊「旅行読売」で原稿の執筆を開始。「旅行読売」での取材を通して、鉄道旅に目覚めるかどうかは未知数。

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