【旅する喫茶店】キャリオカコーヒー(栃木)
こぢんまりとしたカフェのような店内はテーブル席一つとカウンターのみ
蔵の街の裏通りで自家焙煎の妙味を
「マスター」こと藤沼平八郎さんは、栃木市内の喫茶店主としては最古参の一人だ。栃木駅前にレンガ造りの瀟洒な喫茶店コロラドを開業したのは1974年。駅前に大型洋品店が出店したのを機に、「これからは喫茶店だ」と、家業の衣料小売店から転業した。駅前の区画整理で2000年にコロラドを閉じた後は、みつわ通り商店街にコーヒー豆の自家焙煎(ばい線)店を開業。4年前に喫茶店としてリニューアルした。
御年87歳の藤沼さんは数年前までオートバイのトライアルレースにも参戦したバイク好きで、ほかにも中禅寺湖でカヌーを操り、登山もする活動的な趣味人だ。「人生は楽しく」がモットーで、今も午後には店を離れ、自由を謳歌(おうか)している。
後を託される若い女性スタッフもマスターに倣い、「ここを楽しい場所にしたい」と語る。一人で訪れた一見(いちげん)さんでもすぐに馴染めるのは、マスターらの人柄だろう。
おすすめの平八郎ブレンドは、ブラジルベースにコロンビアなどを配合し、雑味がなく、すっきりとした味わい。その日の気温などを考慮して、時間を調整しながら藤沼さんが焙煎する。「焙煎のあとの発酵も重要です」と藤沼さん。挽(ひ)きたてをハンドドリップで淹(い)れるコーヒーは後味が良い。なるほど、これなら何杯でも飲みたくなる。
文・写真/田辺英彦
住所:栃木県栃木市倭町9-11
交通:両毛線・東武日光線栃木駅から徒歩15分
TEL:0282-23-2232
(出典 「旅行読売」2021年5月号)
(ウェブ掲載 2021年7月5日)
旅行読売出版社「旅する喫茶店」2021年9月1日(水)発売 定価1430円(税込)