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【ひとり終着駅へ】秩父鉄道で三峰口駅へ

場所
> 秩父市
【ひとり終着駅へ】秩父鉄道で三峰口駅へ

三峰口駅に入る秩父鉄道の普通列車

SLパレオエクスプレスが走る奥秩父で雄大な自然を実感

秩父山地に囲まれた盆地を走る秩父鉄道は、沿線に素朴な自然が残る。東京から2時間足らずなのに、一気にのどかな気分を味わえるので、これまでも時々訪れたことはある。が、終着駅の三峰口までは行ったことがなかった。そこで今回は、熊谷駅から乗車し、終点まで約1時間30分、存分に車窓を楽しむことにした。

列車はしばらくの間、郊外の平野を進む。空が広い。はるか遠くに秩父山系の山々がそびえ、寄居(よりい)駅を過ぎる頃からは、山あいの景色が色濃くなる。上長瀞(かみながとろ)駅を過ぎると、荒川橋梁を渡る。真下に流れるのは、有名な長瀞ラインくだりで和舟が通る、荒川である。上から見る長瀞渓谷の眺めは壮観だ。

沿線の線路端は、もうすぐ桜や菜の花に彩られ、夏になればアジサイも咲く。車窓に見とれていたら、遠くに見えた山々はもう目の前。列車はだんだん山深く入り込み、クネクネと右に左に曲がりながらゆるい勾配を上り、三峰口駅に到着した。

三峰口駅は、SLパレオエクスプレスの発着駅でもある。SLパレオエクスプレスは、熊谷―三峰口駅間を1日1往復、片道約2時間30分かけてゆっくり走る蒸気機関車。沿線の見所などの車内放送や弁当(要予約)、土産やグッズなどの車内販売もある。昨年は点検のため運休していたが、今年は213日から座席定員を減らして運行を始めた(土・日曜、祝日を中心に運行。全席指定。詳細は要問い合わせ)。

駅に隣接するSL転車台公園は、到着した蒸気機関車の向きを変えるための転車台を中心に、芝生や遊歩道などを整備した公園。SL運行日には、蒸気機関車の整備作業や転車作業を間近で見学できる。昨年秋にリニューアルされ、所々にベンチなどもあるので、駅を発着する列車をのんびり眺められる。

三峰口駅
秩父鉄道三峰口駅の駅舎
転車台
老朽化して撤去された鉄道車両公園の跡地を利用したSL転車台公園
SLパレオエクスプレス
SLパレオエクスプレスの走行風景(浦山口―影森駅間)

三峯神社のご神木にパワーをもらう

三峰口駅は、その名の通り、関東屈指のパワースポット三峯神社の玄関口でもある。伊弉尊(いざなぎのみこと)と伊弉册尊(いざなみのみこと)を祀(まつ)るこの神社は三峰山頂の標高1102㍍に鎮座する。駅からバスで40分ほどかかり、バスの本数も1時間に1本程度と少ないが、せっかくここまで来たのだから、ぜひとも行ってみたい。

標高が高いので、バスの車窓からも迫力ある山々の眺めが楽しめる。三峯神社バス停のある駐車場から5分ほど徒歩で上ると、やっと鳥居が見えてきた。鳥居をくぐり、森閑とした参道を進む。うっそうとした木々に囲まれ、まさに奥秩父に足を踏み入れた感じだ。優美な拝殿の前には樹齢800年というご神木がそびえる。

見逃せないのは、妙法ヶ岳山頂の奥宮を遥拝(ようはい)できるという遥拝殿だ。秩父市街を一望でき、季節によっては雲海も見られる。

帰りは秩父駅で途中下車し、三峯神社、寳登山(ほどさん)神社とともに秩父三社といわれる秩父神社も参拝した。この辺りは絹織物で栄えた江戸時代の名残を感じさせる、昔ながらの建造物が残っている。1753年創業の武甲酒造の店舗もその一つで、建物は国の登録有形文化財だ。

入り口に「非対面型利き酒機で利き酒ができます」という案内を見つけ、入ってみた。「コロナ禍で酒蔵見学も受けられないし、お客様と相対する利き酒も中止になった。それでいち早く、昨年の夏に導入したんです」と武甲酒造の長谷川浩一社長。利き酒のカップを捨てるごみ箱もセンサーで開閉するという念の入れようだ。

春なら長瀞駅や武州中川駅周辺の桜、羊山公園の芝桜など花の見所が多い。秋なら沿線の紅葉や地元産のそばが楽しめる。1泊して翌日に巡るのもいい。

文/高崎真規子 写真/三川ゆき江

三峯神社
ひときわきらびやかな三峯神社境内の隋身門。階段を上ると拝殿がある
三峯神社からの眺め
三峯神社遥拝殿からの眺め
利き酒
武甲酒造の非対面型利き酒機は一定の温度 で保冷。体温検知器で平熱を確認して入室

ひとり旅歓迎の宿

ホテル美やま

大浴場では1955年創業当時から湧く自家源泉、pH8.8のアルカリ性の湯につかれる。露天風呂もある。部屋タイプは和室、洋室、和モダンなどさまざま。1泊2食1万1550円~のほか、朝食のみのプラン9240円~もある(掲載時の料金。詳細は問い合わせ)。

住所:埼玉県秩父市山田1294

交通:西武秩父駅、秩父鉄道秩父駅から送迎15分(要予約)

TEL:0494-24-6311

(出典「旅行読売」2021年4月号)

(ウェブ掲載2021年7月14日)

ホテル美やま
女性用の大浴場「女神風呂」
駅名標
三峰口駅ホームの駅名標

Writer

高崎真規子 さん

昭和の東京生まれ。80年代後半からフリーライターに。2015年「旅行読売」の編集部に参加。ひとり旅が好きで、旅先では必ずその街の繁華街をそぞろ歩き、風通しのいい店を物色。地の肴で地の酒を飲むのが至福のとき。本誌連載では、大宅賞作家橋本克彦が歌の舞台を訪ねる「あの歌この街」、100万部を超える人気シリーズ『本所おけら長屋』の著者が東京の街を歩く「畠山健二の東京回顧録」を担当。著書に『少女たちはなぜHを急ぐのか』『少女たちの性はなぜ空虚になったか』など。

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