【鉄印帳の旅】天竜浜名湖鉄道
天竜浜名湖鉄道(天浜線)の社長直筆の鉄印を貰おうと旅に出た。1940年までに全線開業した天浜線では、開業当時に造られ現存する36の施設が国の登録有形文化財となっている。
掛川駅を出発。桜木駅、原谷(はらのや)駅、遠州森駅には、天浜線が開業した35年当時の駅本屋(ほんや)やプラットホームが残っている。その一つである遠州森駅本屋に置かれた木製ベンチで、昭和初期の面影に浸る。上野部駅近くの「シルクロード・ミュージアム」では、展示されている土器や美術品を鑑賞し、二俣本町駅へ向かった。
旧二俣町中心部にも、国の登録有形文化財に登録される元役場だった建物がある。現在は「本田宗一郎ものづくり伝承館」として、この地で生まれ育った、本田技研工業の創業者・本田宗一郎ゆかりの品々が展示され、戦後日本のものづくりの原点を垣間見ることができる。駅へ戻る途中で、手作り豆富と創作料理ののぼりを掲げていた「ぎふや」で健康三色豆富などがセットになった華膳(2420円)を味わった。
天竜二俣駅へ戻り「運転台・鉄道歴史館見学ツアー」に参加。開業当時から使われる運転台が音を上げて動く姿や、今なお現役として人が出入りする運転区事務室など、そこは昭和の鉄道そのままだった。ガイドの松下ヨリ子さんによると「シン・エヴァンゲリオン劇場版に登場するモデル地の一つになってからは、若いお客さんも増えた」という。
駅本屋では、松井宜正社長が温かく迎えてくれた。社長自ら、“天浜線”と力強く手書きした鉄印をもらい、喜びもひとしおだ。
「昭和レトロな雰囲気をゆっくり体感してほしい」。松井さんの言葉通りの旅が満喫できた1日だった。
天竜浜名湖鉄道
鉄印帳の販売・鉄印の記帳は天竜二俣駅売店にて、9時?16時
鉄印帳2200円(デニム生地2500円/フリー版1320円)/鉄印の記帳料300円・500円(記帳、書き置き等。入場券、乗車券等の提示が必要)
TEL:053-925-2276
(出典「旅行読売」2021年9月号)
(ウェブ掲載 2021年8月27日)
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*2021年3月2日発売 定価1200円(税込)