蓼科湖畔の道の駅を目指してビーナスラインへ
全長約76㌔のビーナスライン。標高1400㍍〜1700㍍の白樺湖〜霧ヶ峰間がコースの白眉(写真/ピクスタ)
高原のヒマワリと星空を眺める
八ヶ岳中信高原国定公園の高原地帯を縫うように走るビーナスラインは、美しい景色と好展望が人気のドライブコースだ。ビーナスラインでは終点の美ヶ原高原まで道の駅はなかったが、蓼科(たてしな)湖畔に昨年できたのも話題を呼んでいる。爽やかな風を感じながら運転する、夏にぴったりの高原ドライブに、八ヶ岳南麓からメルヘン街道を経て向かった。
中央道を韮崎ICで降り、茅ヶ岳(かやがたけ)広域農道を北上。まずは北杜市明野の農村公園会場に立ち寄る。一帯がヒマワリで埋まる夏の風物詩も、コロナ禍で2年続けてイベントは中止。2021年はサンフィニティという品種が5000本植えられ、少しだけ情景がうかがえた。
清里方面へはのどかな北杜八ヶ岳公園線を走る。川俣渓谷に架かる八ヶ岳高原大橋を渡り、展望台駐車場にクルマを止めた。「黄色い橋」と呼ばれ、八ヶ岳から南アルプス、そして富士山が望める絶景ポイントだ。
清里のシンボル、清泉寮(せいせんりょう)を経て八ヶ岳に向かって高度を上げ、サンメドウズ清里を目指す。パノラマリフト10分の空中散歩でたどり着く、標高約1900㍍にある清里テラスが圧巻なのだ。飲み物片手にゆったりとしたソファに座りながら、富士山をはじめ、茅ヶ岳や秩父連峰などの峰々と野辺山高原が一望のもとに見渡せる。サンメドウズ清里の立木翔さんは「朝方だけでなく、夕方でも雲海が見られるときがあります」と話す。雄大なパノラマに雲海も見られたらラッキーだ。
八ヶ岳山麓は天体観測にも適したエリア。今晩の宿、清里高原ホテルは天文台を備え(コロナ禍で休止中の場合あり。要確認)、星のソムリエ資格を持つスタッフもおり、宿泊客を対象に毎晩4回、星空観察会を実施している。フランス料理が評判のホテルだが、「同じくらい星空観察が目的のお客様は多いです」と宿泊課の山島幸樹さん。「8月20日頃までは夜半から明け方にかけて小流星群も見られます」
道の駅ビーナスライン蓼科湖で休憩
翌日はドイツの観光街道にちなんだメルヘン街道(国道299号)を通って、茅野市へ向かう。ワインディングロードで、開けた景観は少ないが、八千穂高原の白樺群生地など木立の中、窓を開けて涼風を感じながら走れる。
茅野市街で国道152号を経てビーナスラインへと入る。昨年7月に道の駅ビーナスライン蓼科湖が開設された。小さいながら湖畔に面したロケーションが魅力だ。今年5月にオープンした店舗は、透明なシートと木材を利用し、景観にマッチした建物。直売コーナーでは8月はトウモロコシや高原野菜が旬で、珍しい地元産「夏秋いちご」は、甘味と酸味のバランスが絶妙だ。併設の「グリル蓼科」では、信州和牛や信州ポークを使った弁当を販売。店内でも食べられるが、湖畔のテーブルに着き、景色と一緒に味わった。
隣接する喫茶蓼科アイスは、バニラビーンズが香る濃厚タイプと八ヶ岳中央農業実践大学校の牛乳を使ったさっぱりタイプ、2種のこだわりのソフトクリームが人気だ。開業1周年を記念して復刻した「蓼科アイス」は、蓼科に仕事場のあった映画監督の小津安二郎が好んだという懐かしい味のアイスキャンディー。社長の鎌倉功さんが子どもの頃に食べた味を再現したという。
ビーナスラインを快走して湿原へ
この先、白樺湖を過ぎるとビーナスラインのハイライトともいえる好展望が現れる。どこまでも緑の高原と紺碧の空、白い雲が続く中を、まっすぐに、時にカーブを描きながら道は続いていく。8月上旬まで緑に山吹色が映えるニッコウキスゲも見られる。北アルプスから南アルプスの山並みが遠景に見える、まさに雲上のスカイルートだ。
旅の締めくくりに、八島ヶ原湿原を散策。約1万年以上の歳月をかけて形成された高層湿原で広さ約43㌶、1周1時間30分ほどの遊歩道が整備されている。
帰路は霧ヶ峰から南へ、踊場湿原を左に見て、細い道を下って諏訪ICを目指す。
文/田辺英彦 写真/青谷 慶
<問い合わせ>
清里テラス(サンメドウズ清里)TEL:0551-48-4111
清里高原ホテル TEL:0551-20-8111
道の駅ビーナスライン蓼科湖 TEL:0266-67-2222(蓼科観光案内所)
喫茶蓼科アイス TEL:0266-75-0905
八島ビジターセンター TEL:0266-52-7000
(出典「旅行読売」2021年9月号)
(ウェブ掲載2021年11月25日)