たびよみ

旅の魅力を発信する
メディアサイト
menu

御湯印帳で温泉巡り 九州八十八湯めぐり

場所
> 別府市
御湯印帳で温泉巡り 九州八十八湯めぐり

竹瓦温泉の現在の建物は1938年築で、国の登録有形文化財

人気の別府、由布院温泉から「泉人」を目標にスタート

「九州八十八湯めぐり」は、九州の温泉の中から「ホンモノ」にこだわって選定された温泉を巡って御湯印帳にスタンプを集め、全7県88湯制覇で「泉人(せんにん)」に認定されるというもの。2020年に10周年を迎えた。「日本一のおんせん県」をうたう大分県は、対象施設も37か所と最も多い。代表格の別府、人気の由布院の両温泉を含む5施設を回った。

大分空港からレンタカーで別府を目指す。今回は対象施設が集まり、段位認定窓口もある別府からスタートした。窓口になっている多機能拠点べっぷ未来わくわくセンター「yoiya(よいや)」で御湯印帳(100円)を購入。yoiyaの代表、川浪佳恵さんは、「温泉巡りを通して温泉の味わい方と自然の素晴らしさを知ることができます」と話す。「東京在住の男性会社員は、10年間で八十八湯を38巡して、いかに効率よく巡るかを考えるのが楽しいそうです」など、窓口を訪れた体験者のエピソードを語ってくれた。

別府温泉のシンボルでもある市営の共同浴場、竹瓦(たけがわら)温泉は唐破風(からはふ)造りのたたずまいが温泉情緒をかき立てる。内湯は熱めだが、このご時世、地元の人も観光客も涼しい顔で「黙浴」を実践している。皆に倣(なら)って、深い湯船に身を沈めてみたが、すぐさま熱さに音(ね)を上げた。名物の砂湯は、時間制で一度に8人が体験できる。浴衣に着替えて、頭部以外に砂をかけてもらう。重いし熱い。冬場は所要15分ほどだが、すぐに汗が噴き出し、デトックス効果を実感した。

120か所以上の公衆浴場がある別府市。亀川の住宅街にある四の湯(しのゆ)温泉は町内外の組合員約180人の会費などによって運営、維持されている。昭和20年代築という建物は歴史を感じさせ、脱衣所一体型の浴室は広々としていて気持ちがいい。別府の共同浴場の特徴である半地下、高天井、湯気抜き、小判型浴槽などすべてを備える。湯船は二つに区切られているが、温度は同じ。ちょうどいい湯加減で、肌にやさしい温泉だ。飲泉もできる。組合長の池田康雄さんは、「昔はこの辺りも貸間が多く、農閑期には農家の人たちで四の湯もにぎわったものです」と昔日を懐かしむ。

竹瓦温泉外観
竹瓦温泉の現在の建物は1938年築で、国の登録有形文化財
竹瓦温泉
脱衣所一体型で階段を降りたところに湯船がある内湯。男湯と女湯で泉質が違う
砂湯
砂の下を通る管から温泉が噴き出し、50度前後に調整して利用する砂湯
四の湯温泉
昔ながらの共同浴場の風情を残し、受付には近在の老夫婦が交代で当番に当たる
四の湯温泉
女湯との境の壁には昭和20年代に書かれた鉱泉分析表が掲げられている

火山の近くで大地の鼓動を感じる温泉

別府から由布院へ向かう県道616号から分かれて山の斜面を上った終点に日帰り専用の塚原温泉 火口乃泉(かこうのいずみ)がある。それぞれ独立した内湯と露天風呂の湯小屋と、二つずつ家族風呂がある建物が2棟、湯船が大きい離れの家族風呂などが山肌に点在する。山頂から引いた無色透明な温泉は、メタケイ酸や金属イオンを多く含む。約41度の湯は長湯にちょうどいい。東京から仕事で来た男性は「ここの温泉はいちばん」と、出張のたびに訪れるという。

温泉保養集落 束ノ間(つかのま)は、集落内に点在する温泉付き離れ家を一棟貸しするスタイルの宿。露天風呂だけが共用で、日帰り利用もできる。券売機で料金を払う仕組みだ。由布院温泉では珍しいブルー系の湯が特徴。明るい青みがかった温泉がかけ流しになった露天風呂は、20人以上が一度に入れるほど広々としている。北東方向に冠雪の由布岳が見え、開放的な気分で湯浴みを楽しんだ。

由布院から20分余り、湯平(ゆのひら)温泉の旅館 山城屋は昨年4月に新たに加わった。石畳の温泉街より一段高い斜面に立つ、家族経営の小さな旅館だ。「八十八湯めぐりで訪れるお客さんが増えました」と主人の二宮謙児さん。内湯、大小の露天風呂、陶器風呂と計四つの風呂が貸し切りで利用できる。郷土の味が満載の里山ランチは、温泉利用者は1100円で味わえる。里山の風景を眺めながら、のんびりと湯につかる。適温のやわらかな温泉は、慌ただしかった1日の疲れをほぐしてくれる。私の九州温泉道は始まったばかりだ。

文/田辺英彦 写真/森田公司

塚原温泉内湯
塚原温泉の高天井の内湯。泉質の良さが評判
塚原温泉
塚原温泉から徒歩5分のところにある噴火口も見学できる(200円)
束ノ間
由布岳を仰ぎ見る束ノ間の広々とした男性用露天風呂。ブルーの湯は気温や光線の加減で変化する
湯平温泉
石畳の坂が湯治場としての情緒を残す湯平温泉街
旅館山城屋
旅館 山城屋の四つの貸切風呂ともやわらかな湯触りが特徴。信楽焼の陶器風呂は2人で入っても十分な広さ

九州八十八湯めぐりとは?

温泉名人が選定した九州の温泉の中から、88湯のスタンプを集めて「泉人」を目指す。九州温泉道実行委員会が運営する通年開催のイベント。JR九州の主な駅や対象施設の一部で「御湯印帳(スタンプ帳)」100円を買い、対象施設に入浴すれば「御湯印(スタンプ)」をもらえる。

集めたスタンプ数や訪れた県の数によって、別府温泉の段位認定窓口にて、修業度を示す「段位」認定(有料)が受けられる。「段位」は「見習い(8個)」→「入門(16個)」→「初級(24個)」→「中級(32個)」→「初段(40個)」→「二段(48個)→「三段(56個)」→「四段(64個)」→「風呂(プロ 72個)」→「泉生(せんせい 80個)」→「泉人(せんにん 88個)」の11段階。「見習い」以外は認定状とともに段位に応じた賞品が届く。また最上位の「泉人」は、別府の竹瓦温泉に名前を掲示され、一部施設で特典が受けられる「泉人優待券」をもらえる。

段位認定の問い合わせはTEL090-2399-9382(九州温泉道段位認定窓口)。詳細は公式ホームページを参照。

キーホルダー
ストラップ本体に段位に応じたチャーム(写真)を付ける

竹瓦温泉(別府温泉郷)

交通:日豊線別府駅から徒歩10分/東九州道別府ICから6㌔

住所:大分県別府市元町16-23

問い合わせ:0977-23-1585

●四の湯温泉(別府温泉郷)

交通:日豊線亀川駅からタクシー5分/東九州道別府湾スマートICから9㌔

住所:別府市亀川四の湯町20-4

問い合わせ:なし

塚原温泉 火口乃泉(塚原温泉)

交通:久大線由布院駅からタクシー15分/大分道由布岳スマートICから3㌔

住所:大分県由布市湯布院町塚原1235

電話:0977-85-4101

温泉保養集落 ノ間由布院温泉)

交通:久大線由布院駅からタクシー7分/大分道湯布院ICから5㌔

住所:大分県由布市湯布院町川上444-3

問い合わせ:0977-85-3105

旅館 山城屋(湯平温泉)

交通:久大線湯平駅から徒歩1時間30分(宿泊の場合、駅から送迎8分)/大分道湯布院ICから13㌔

住所:大分県由布市湯布院町湯平309-1

問い合わせ:0977-86-2462

 

(出典「旅行読売」2022年3月号)

(WEB掲載 2022年3月24日)


Writer

田辺英彦 さん

東京都大田区出身、埼玉県在住。旅行ガイドブック編集・執筆、出版業界誌執筆などを経てフリーランスに。東北・八幡平の温泉群と、低山ハイク、壊れかけたもの・廃れたものが好き。

Related stories

関連記事

Related tours

この記事を見た人はこんなツアーを見ています