神田上水の記憶と再生の物語に触れる(2)
浅草橋から下流を望むと両岸にずらりと屋形船が係留されている。奥の柳橋の先が隅田川
東京都水道歴史館で上水道の変遷を知る
水道橋からお茶の水へと上って行くと、「神田上水懸樋(かけひ=掛樋)跡」の石碑があり、江戸時代の掛樋を描いた風景画がはめられている。地下に埋設した樋で神田、日本橋方面に給水していた技術に驚く。
外堀通りの向こう側、順天堂醫院(いいん)旧本館のファサードを再現した白亜の建物が目を引く。その裏側に東京都水道歴史館がある。江戸上水の展示では実物の木樋(もくひ)や上水井戸が見られる。学芸員の金子智さんは「明治31年に、淀橋浄水場でつくられた水道水が初めて都心に送られ、神田上水は役割を終えました」と解説する。
神田山を開削したため御茶ノ水橋から眺める神田川は渓谷のよう。次の聖(ひじり)橋は関東大震災の復興橋として1927年に架けられた。補修工事に合わせ、2018年には建設当時の姿に復活。コンクリートのアーチ橋は雄大で美しい。
昌平(しょうへい)橋から下流の右岸、赤レンガのアーチが並ぶ建物の上を中央線が走る。明治後期の1912年に開業した旧万世(まんせい)橋駅だ。商業施設として再生し、階段やプラットホームなどの遺構が見られる。
江戸時代、万世橋から浅草橋までの右岸は、土手沿いに柳が植えられ柳原土手と呼ばれた。時代小説を読むと、柳原土手に古着屋が並ぶ光景が出てくるが、この辺りなのかと感慨を覚えた。「既製服問屋街発祥の地」でもある。
浅草橋から下流に柳橋が見え、神田川は大川(隅田川)に合流する。川面には屋形船や釣り船がずらりと浮かび、風流な景観を醸し出している。神田川には昭和の叙情的フォークソングより、江戸から現代へと連綿と続く人々の営みに対する讃歌のほうがふさわしいと感じた。
文・写真/田辺英彦
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神田川沿いのグルメ&土産&体験
ル・ジャルダン
ホテル椿山荘東京のロビーラウンジ、ル・ジャルダンでは時間ごとのメニューがあり、アフタヌーンティーはスイーツとスコーン、季節の食材を使ったキッシュ、サンドウィッチなどが、庭園を眺めながら味わえる。■10時〜21時/無休/TEL:03-3943-0920
神田明神文化交流館EDOCCO
神田明神境内にある複合施設EDOCCO(えどっこ)。1階のカフェMASU MASUでは勝カレー1350円などの食事のほか、枡に入った枡パフェ950円が味わえ、神社声援(ジンジャエール)3本セット1200円なども販売。ショップIKIIKIでは雑貨・御神具からアニメコラボ商品まで扱う。■9時〜18時(時期により変動あり。カフェは10時~16時30分)/無休/TEL:03-3254-0753
神田川クルーズ
地下鉄半蔵門線・銀座線三越前駅から徒歩2分の日本橋のたもとにある日本橋船着場から日本橋川を遡り、三崎橋のところで神田川に合流、川を下って隅田川に出て日本橋に戻る90分のコース。川から見上げる聖橋など、地上とは違う趣を感じられる。春は大川端付近の桜を観賞。■運航日・料金はホームページ参照/TEL:03-5679-7311
住所:東京都文京区本郷2-7-1
交通:中央・総武線御茶ノ水駅から徒歩7分
TEL:03-5802-9040
(出典:「旅行読売」2022年5月号)
(WEB掲載:2022年6月9日)