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【今宵は文化財の宿】日奈久温泉 旅館 金波楼(熊本県八代市)

場所
> 八代市
【今宵は文化財の宿】日奈久温泉 旅館 金波楼(熊本県八代市)

約50坪の美しい庭園を国登録有形文化財の建物が囲む

 

贅を尽くした宿で、八代藩主の御前湯につかる

八代(やつしろ)市の南西に位置し、木造3階の古い建物や石畳などが風情を醸す日奈久温泉。1409年の開湯と伝わり、県内最古の温泉地とされる。湯量も豊富だ。江戸時代には、八代藩主の御前湯となり、細川や島津の殿様も湯あみをしたという。俳人・種田山頭火(たねださんとうか)が愛した温泉としても知られる。

金波楼は明治末期の1910年創業の純和風旅館。木造3階の重厚な建物目当ての宿泊客も多い。「創業時、九州一番の大旅館ということで新聞にも載りました」と館主の松本寛三さん。

木造3階建てが多い日奈久の中でも、最も贅を尽くしたといわれている

現存の木造3階建てとしては熊本県内で最も古いという建物は、2009年、国の登録有形文化財に登録された。外観だけでなく、館内の至る所にこだわりが見られる。客室ごとに書院のあしらいが異なるのもその一つ。磨き上げられた廊下は山桜、柱にケヤキ、要所にヒノキや黒松など、良質の木材を贅沢に使用している。

館内の中央部にある大階段も見事だ。蓄音機が置かれたかつてのハイカラなダンスホールは、現在、ギャラリーとして開放されている。

外に目を向ければ、約50坪という日本庭園が木造の建物に映える。これからの時期にはツツジやアジサイが鮮やかな彩りを添える。

磨き抜かれた床にも歴史が感じられ、和の趣漂う玄関
客室は欄間など意匠の細部までこだわりが見られる
植え込みの緑に癒やされる岩組みの露天風呂
外傷によいとされる歴史ある湯が満ちる男女別大浴場

湯はラジウムを含んだ単純温泉。刀傷を治すために見つけ出されたという開湯の伝説の通り、適応症は切り傷のほか、神経痛、リウマチなど。また、肌がきれいになると女性からも評判だ。野趣あふれる岩造りの露天風呂も心地良い。温泉街から八代海はすぐ近く。夕食では、地元でとれた旬の海の幸を中心とした会席料理が味わえる。

「御前湯」を満喫したら、翌日は〝殿様気分〟で市内の八代城跡公園(入園自由)を訪れよう。細川忠興(ただおき)も入城した八代城は、今年築城400年。建物は現存しないが、国の史跡で続日本100名城にも選ばれている。園内には石垣や堀などが残り、往時をしのぶことができる。

文/荒井浩幸


日奈久温泉 旅館 金波楼

住所:熊本県八代市日奈久上西町336-3
交通:肥薩おれんじ鉄道日奈久温泉駅から徒歩12分/南九州道日奈久ICから1キロ
TEL:0965-38-0611

料金(税・サ込み/2人1室利用):1泊2食付き1万7750円~
※掲載時の料金。公式ホームページで要確認

(出典:「旅行読売」2022年6月号)

(WEB掲載:2022年6月3日)


Writer

荒井浩幸 さん

1970年、埼玉県生まれ。旅に関することならジャンルを問わず、オールマイティにこなす、旅行ライター。食欲旺盛で、その「実力?」は特に味の店の連続取材の時にいかんなく発揮される! そして、昼はコーヒーを味わい、夜はお酒をたしなむ。旅とともに国内の民俗に関心をもち、研究もしている。

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