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六角精児「僕の青春18きっぷの旅」(2)

場所
六角精児「僕の青春18きっぷの旅」(2)

多くの鉄道番組に出演し鉄道ファンとして知られ、「青春18きっぷのおかげで、ほぼすべての路線を制覇できた」と話す俳優・六角精児(ろっかく せいじ)さんに、思い出を語っていただいた。

六角精児「僕の青春18きっぷの旅」(1)から続く

 

歴史の痕跡を探して知らない町を歩く

高校生の頃、旅慣れた友人と周遊券を使って東北を巡った旅が、鉄道旅の原体験です。上野から急行「十和田」の客車に乗ったのも懐かしい思い出です。宮城県の女川(おながわ)では、列車の発車時間ギリギリで走って駅に向かいましたが、車掌さんが我々を認めて出発を待ってくれました。ローカル線にはそんな人情味があったんです。

その記憶があるからでしょうか、大きな駅にはないローカル線の風情を求めて行くのが僕の旅の一つの要素になっています。何もない街を歩いてみて、そこに何があるのか見てみる。必ず歴史の痕跡があるものだし、「本当に何もなかった」こと自体も思い出なのです。

「青春18きっぷ」を使った夏旅のおすすめはやはり北海道ですね。バス転換が取り沙汰されている留萌(るもい)線のほか、宗谷(そうや) 線、石北(せきほく)線などは今のうちに乗っておきたい路線です。

花咲線(根室線の釧路-根室駅間の愛称)は大好きで、乗ったことがないなら絶対に乗るべきです。落石(おちいし)辺りで遭遇する切り立った海岸の断崖絶壁、厚岸(あっけし)から茶内(ちゃない)にかけて別寒辺牛(べかんべうし)湿原を走る車窓風景は花咲線のハイライト。道東の大自然の迫力を実感します。

それと北海道で走っている寒冷地仕様の国鉄車両キハ54形気動車にも、ぜひ今のうちに乗っておきたい。ハイブリッド車両が導入されると、下から突き上げるように聞こえてくるディーゼルのエンジン音がなくなってしまう。あれも旅情の一つですから。

花咲線の落石駅近くの車窓風景
花咲線の終点、根室駅停車中の列車

今、青春18きっぷを使って旅に出るなら……

今、休みが取れて「青春18きっぷ」を使って旅するなら、久しく乗っていない花輪線です。花輪線全線に乗ったら鷹ノ巣から秋田内陸縦貫鉄道を走破して、横手で焼きそばを食べ、大石田まで行って、銀山温泉に泊まります。翌日は奥羽線を南下して、赤湯の人気ラーメン店「龍上海(りゅうしゃんはい)」で辛みそラーメンを食べて帰ってくる、なんていいですなあ。

聞き手/田辺英彦

古い町並みが残る銀山温泉

六角精児(ろっかく せいじ) 

1962年、兵庫県生まれ。劇団「善人会議」(現・扉座)旗揚げメンバー。数々の舞台、ドラマ、映画でバイプレイヤーとして活躍中。2015年春からNHK BSプレミアムの紀行番組「六角精児の呑み鉄本線・日本旅」に出演、日本各地のローカル線を巡っている。「六角精児バンド」で音楽活動を行うほか、今年4月には往年のフォーク/ロックの隠れた名曲をカバーした初のソロアルバム「人は人を救えない」をリリースした。

(出典:「旅行読売」2022年7月号)

(Web掲載:2022年7月21日)


Writer

田辺英彦 さん

東京都大田区出身、埼玉県在住。旅行ガイドブック編集・執筆、出版業界誌執筆などを経てフリーランスに。東北・八幡平の温泉群と、低山ハイク、壊れかけたもの・廃れたものが好き。

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