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世界文化遺産登録20周年「紀伊山地の霊場と参詣道」を歩く よみがえりの聖地 熊野へ(1)

場所
> 田辺市、新宮市、那智勝浦町
世界文化遺産登録20周年「紀伊山地の霊場と参詣道」を歩く よみがえりの聖地 熊野へ(1)

「本宮」「速玉」「那智」の熊野三山に至る参詣道・熊野古道。熊野川と大斎原を一望できる展望台は絶好のビュースポット。熊野本宮大社から約2キロの中辺路の道中にある「ちょっとより道」の看板が目印。写真/(公社)和歌山県観光連盟提供

 

その道は神道、仏教、修験道の霊場へとつながる。人々は現世でのよみがえりと、来世の幸せを願った。古の巡礼旅は、現在の観光旅行の事始め。世界的聖地となった熊野三山に参詣する。

“よみがえり”の象徴、熊野本宮大社の檜皮葺の社殿

和歌山、奈良、三重に広がる紀伊山地は古くから自然崇拝の聖地だ。なかでも熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社と那智山青岸渡寺の「熊野三山」は神道、仏教、修験道の霊場であり、参詣道(さんけいみち)の熊野古道や、自然と人間の営みが一つになり形成された文化的景観と合わせ、世界遺産に登録されている。

まず目指したのは熊野本宮大社。1889(明治22)年の洪水の流失を免れた社殿3棟を、1891年に高台に移築し再建。静かにたたずむ檜皮葺の社殿そのものが、“よみがえり”の象徴だ。

「体感し、想いを込めて祈ることで自分自身をととのえる地が熊野です。この20年で海外からの参詣客も増えました。和歌山の町の魅力も知って欲しい」と九鬼(くき)家隆宮司は話す。

世界で唯一“ 入浴できる世界遺産”

つぼ湯 写真/(公社)和歌山県観光連盟提供

かつて、参詣者は「湯垢離場(ゆごりば)」で心身を浄め疲れを癒やした。約1800年前に発見されたという湯の峰温泉。つぼ湯は世界で唯一“ 入浴できる世界遺産”だ。ひん死の淵から湯治でよみがえった「小栗判官伝説」の地は、湯けむりで情緒たっぷり。木造建築の「旅館あづまや」など、温泉街には14軒の宿泊施設が立ち並ぶ。民宿やゲストハウスもあり、近年は外国人観光客にも人気だ。

うなぎの「鹿六」で腹ごしらえをしたら、熊野川に沿って新宮市の熊野速玉大社へ。神門をくぐると、朱塗りの壮麗な社殿が視界に飛び込んでくる。「当社には『濡藁沓(ぬれわろうず)の入堂』の教えがあります。願いを抱き辿り着く参詣者を、濡れた藁沓(わらづつ)をはいたままでも、思いやりの心で迎え入れるというもの。よみがえりの地とは、安らかな心で生きる力を取り戻す、ということです」(上野潤権宮司)。

摂社の神倉神社は、熊野神が最初に降臨したゴトビキ岩がご神体。山麓に新宮(速玉大社)を祀る前の元宮で、市街地と熊野灘を望む景色が美しい。新宮の銘菓は「鈴焼」。ほんのりとした甘さで、熊野三山の神鈴にイメージが重なる愛らしい形も人気の秘訣だ。

熊野本宮大社

主祭神は熊野川を神格化した家都美御子大神(けつみみこのおおかみ)。檜皮葺の本殿3棟は重要文化財。かつては「熊野坐神社(くまのにいますじんじゃ)」と呼ばれた。境内の八咫ポストで投函する郵便は20 周年記念「八咫烏印」の消印になる。
🔳境内自由。参拝は7時~17時/田辺市本宮町本宮1110/TEL:0735-42-0009
公式サイトはこちら

大斎原(おおゆのはら)

高さ約34メートル、幅約42メートルの日本一の大鳥居がそびえ立つ、熊野本宮大社の旧社地。1万1000坪の境内に5棟12の社殿と、楼門、神楽殿、能舞台などがあった。熊野本宮大社から徒歩10分。
🔳田辺市本宮町本宮1/TEL:0735-42-0009(熊野本宮大社)

湯の峰温泉・つぼ湯

熊野古道の湯垢離場で世界遺産。谷合に湧き出る小さな天然岩風呂は日に7度、湯の色が変わると言われる。
🔳800円(30分交代制、併設の公衆浴場にも入浴可)/6時~20時30分、不定休/田辺市本宮町湯峯110/TEL:0735-42-0074

旅館あづまや

開湯約1800年の湯の峰温泉は照手姫の助けを得た湯治でよみがえった「小栗判官照手姫物語」の舞台。「旅館あづまや」は江戸期開業で文人や芸術家が愛した宿。大浴場や露天風呂は自家源泉が注がれる。
🔳1泊2食1万6500円~(消費税・入湯税別)。田辺市本宮町湯峯122/TEL:0735-42-0012
公式サイトはこちら

熊野速玉大社

水玉の動きと勢いを示す熊野速玉大神が主祭神。2028年に創建1900年を迎える。樹齢1000年のご神木「梛」は天然記念物。「熊野神宝館」は国宝の古神宝など1000点を超える文化財を所蔵し一般公開している。
🔳500円/9時~16時/新宮市新宮1/TEL:0735-22-2533
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神倉神社・ゴトビキ岩

熊野古道の一部である538段の急峻な石段を登った神倉山の中腹にご神体のゴトビキ岩(熊野でヒキガエルの意)が鎮座する。松明を手に暗闇の石段を駆け下りる奇祭「お燈祭」も有名。
🔳新宮市神倉1-13-8/TEL:0735-22-2533(熊野速玉大社)

鹿六 本宮店

熊野本宮大社からすぐ。厳選した国産うなぎを紀州備長炭で丹念に手焼きし、100年以上注ぎ足して受け継ぐ秘伝のタレと調和させる。「うな重」(5500円)は一尾まるごとがのり、ボリューム満点。
🔳11時~13時30分(土・日曜、祝日14時)、月曜休/田辺市本宮町本宮251-1/TEL:0735-38-8009
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鈴焼

明治初年創業の老舗・香梅堂の銘菓。和三盆の上品な甘さで、保存料未使用。老若男女が楽しめる味。
🔳9時~21時(日曜17時30分)、火曜休/新宮市大橋通3-3-4/TEL:0735-22-3132
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和歌山県観光の問い合わせ/和歌山県観光振興課・(公社)和歌山県観光連盟TEL:073-441-2424
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※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2024年5月号)
(Web掲載:2024年4月3日)


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