洞窟露天風呂の忘帰洞から望む太平洋の雄大な景色

ともに世界遺産の熊野古道と熊野三山の熊野那智大社で知られる那智勝浦町。この町のもう一つの名物が、那智勝浦温泉だ。中でも最大の宿がホテル浦島。緑豊かな半島に本館・なぎさ館・日昇館・山上館と四つの宿泊棟が立ち、それぞれがトンネルでつながっている広大な宿だ。

最大の魅力は、泉質の素晴らしさ。硫黄臭が強い白濁の源泉が、本館のすべての浴槽にかけ流しで使用されている。浴槽ごとに温度が微妙に異なるので、好みによって入浴できるのがありがたい。雄大な太平洋を望む大洞窟絶景露天風呂の忘帰洞（ぼうきどう）に加えて、「ハマユウの湯」と「滝の湯」でもこの源泉が利用されている。

日昇館の浴場では、浴槽ごとにかけ流しの源泉が異なり、無色透明や黄色など湯の色や感触の違いを楽しめる。洞窟露天風呂の玄武洞のほか、男女別の内湯の「磯の湯」がある。1泊2日ではすべての浴場を制覇するのは大変だが、その充実度が温泉好きにはうれしく、何度でも利用したくなるのだ。宿泊者限定で「湯めぐり記念スタンプラリー」も実施されており、すべての浴場のスタンプを押すと入浴剤がもらえる。

食事は朝夕食ともにレストランでバイキング料理。地元の勝浦漁港は生マグロの水揚げ日本一で知られており、夕食では生マグロの刺し身食べ放題が名物になっている。地元の契約農家から一部を仕入れている新鮮な野菜や郷土料理のめはり寿司（ずし）なども好評だ。朝食もシンプルながら必要十分と感じるメニューで、私は個人的にフルーツグラノーラが気に入っている。

本館・なぎさ館・日昇館はどこに宿泊しても風呂や料理が共通なので、1泊2食1万5000円前後で泊まれる本館がおすすめ。2人1室なら和室より洋室が割安の設定になっている。山上館は名前の通り山の上に立つ宿泊棟で、客室からの眺望が絶景。レストランの料理もより豪華で、さらにグレードアップしたメニューも選択できる。記念日などでの宿泊に最適だ。

天気が良ければ山上館から続く散策路を歩いてみるのもおすすめ。狼煙山（のろしやま）遊園と名付けられた散策路は吉野熊野国立公園内にあり、太平洋や勝浦湾を見渡せる展望台やパワースポットの浦島稲荷神社などを巡ることができる。

文・写真／藤田 聡

ふじた さとし（温泉研究家）

◎1964年、東京都生まれ。JTB能力開発主催の第1回温泉旅行検定試験で全国1位となり、「温泉旅行博士」の称号を授与され、翌年も連覇。情報サイトのAll About「温泉」ガイド。入浴した温泉数は数千以上

ホテル浦島
TEL:0735-52-4111
住所：那智勝浦町勝浦1165-2
客室：本館：トイレあり34平方メートル洋室など全83室
温泉：含硫黄―ナトリウム・カルシウム―塩化物泉など
食事：夕・朝食＝食事処
料金（2人1室利用・税込み）：朝食付き平日1万50円～　休前日1万2250円／2食付き平日1万4450円～　休前日1万6650円～
※露天風呂あり、掛け流し
※ひとり泊可(通年可、眺望なしシングルで平日は朝食付き－1100円、2食付き－2200円)。
交通：紀勢線紀伊勝浦駅から徒歩6分の勝浦港・観光桟橋から無料シャトルバスまたは無料送迎船5分／那智勝浦新宮道路那智勝浦ICから1.5キロで専用駐車場。無料シャトルバス10分

※料金等すべて掲載時のデータです。

（出典：「旅行読売」2024年1月号）
（Web掲載：2023年12月29日）

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