駅舎のある風景 小島谷駅【越後線】
日本海近くの静かな無人駅の夕刻
日を浴びて黄金色に輝く田んぼの中をカラフルな車体の列車が行き交う。新潟で最後の活躍を続ける新潟色(白地に青・赤のライン、赤と黄色の2色塗装など)を施した国鉄型115系車両と、それと入れ替わりで運用が始まった新型E129系車両を撮影しようと、越後線が走る出雲崎(いずもざき)へと向かった。
列車を撮影しながら巡っている途中、ある店で色鮮やかな紙風船を目にした。北前船の寄港地、漁業の町として栄えた出雲崎では、漁師の妻の冬場の仕事として紙風船作りが始まり、今でも日本一の生産量を誇るという。
夕暮れが近づいた頃、越後線の前身である越後鉄道の創始者・久須美(くすみ)親子の邸宅(住雲園=じゅううんえん)近くにある小島谷(おじまや)駅に立ち寄る。すると無人の駅舎の背後にある空が、あたかもあの紙風船のように美しい茜(あかね)色に染まっていった。
文・写真/越 信行
前身の越後鉄道は1913年全通。同年、与板駅として開業し、2年後に現在の名に改称した。小島谷駅は出雲崎駅から普通列車で8分
(出典:「旅行読売」2020年10月号)
(WEB掲載:2022年9月16日)