【うわさの夏麺】そうめんは夏だけの食べ物じゃない! ソーメン二郎の「そうめんを巡る旅」
宮城県の白石温麺(うーめん) 写真/宮城県観光プロモーション推進室
種類も食べ方も全国いろいろ
そうめんは奈良時代に中国から伝わった、小麦粉をこねてねじった「索餅(さくべい)」が起源とされ、室町時代には今の形となり、寺院や宮中で食べられていました。江戸時代以降、しょう油の普及とともに大衆的な料理として食べられ続けてきました。家庭料理ですから、どの地方でどんな食べ方をしているか、その実態はあまり知られていません。全国のユニークなそうめんをご紹介します。
まず山形は「ひっぱりうどん」風の食べ方。めんつゆに缶詰のサバ、納豆、ネギ、卵を入れてうどんと一緒に食べます。山形は冬が厳しいため缶詰、乾麺の保存食を常備しています。夏はこの食べ方でそうめんを食べる。サバ缶の消費量は山形が日本一だとか。
宮城は「白石温麺」。普通のそうめんの長さ19センチに対し、白石温麺は9センチ。胃腸に優しく油を使わずに製麺され、喉の通りが良いようにとハーフサイズに。人を想(おも)う心が温かいから「温麺」なのです。とろみをつけたしょう油ベースのつゆに野菜、豆麩(まめふ) 、油揚げ、ニンジン、ナスなどが入っています。
富山は「大門素麺(おおかどそうめん)」。富山湾では透明感のあるピンク色のシロエビが水揚げされます。食べ方はやはりシロエビだしで作っためんつゆで。シロエビの上品な甘みが感じられるおいしいつゆです。
香川は「なすそうめん」。通常のナスの3倍はある三豊(みとよ)なすが香川の名産品。そうめんと相性が良
く食欲のなくなる夏にピッタリです。油で炒めたナスを、油揚げ、唐辛子とともに砂糖としょう油を加えたいりこのだし汁で煮て冷やし、そうめんを入れたら完成。
愛知は「和泉(いずみ)そうめん」。3メートルもあるそうめんです。名古屋は赤味噌(みそ)が有名です。赤味噌とお酢を使った食べ方が「酢味噌そうめん」。赤味噌、酢、みりん、砂糖を混ぜてすりごまをかけてキュウリ、大葉、ミョウガなどの薬味と食べる。赤味噌のコクとお酢のさっぱり感がクセになります。
家庭だけでなく、「そうめん流し」施設に出かけて食べるという鹿児島はそうめん消費量日本一。指宿には市営の「唐船峡そうめん流し」まであります。湧水が循環するそうめん流し機にそうめんを流して食べます。なお、鹿児島では「流しそうめん」でなく「そうめん流し」と言います。
沖縄は「そうめんチャンプルー」。50年前は冷蔵庫が少なく、頻繁に台風が来るため、停電してもガスコンロで、保存食として家に常備しているそうめんとサバ缶を使ってそうめんチャンプルーを作ったと言われています。
生そうめんの登場や、そうめん専門店が急増中
今注目されているのは生そうめん。北海道岩見沢市の「めんめん」は生そうめんの製麺販売、店舗での実食もできます。モチモチ感がすごいです。奈良県桜井市の三輪山勝(みわやまかつ)製麺の生そうめんは、通常、そうめん作りに使う油を使わず吉野葛を使うため麺に光沢があり流れていくような喉越しが魅力です。埼玉県朝霞市にある「本格冷凍麺工房武蔵野」の「生素麺」は、画期的な急速凍結製法の冷凍素麺で、驚くほどの弾力が楽しめます。
私の故郷である奈良県桜井市には創業300年以上の「三輪(みわ)山本」の食事処があり、観光名所になっています。細さ0.6ミリの「白龍」を使った冷やしそうめんが大人気です。
三輪そうめん「池利」が運営する「千寿亭」では本格手延べそうめんが冷と温で楽しめます。近くには日本最古の神社と伝えられる大神(おおみわ)神社、卑弥呼の墓だと考えられている箸墓古墳もあります。
東京にもそうめん専門店が急増中です。徳島の半田そうめんを使ったすだちそうめんが人気の専門店「阿波や壱兆(いっちょう)」(新宿)、小豆島そうめん「島の光」を使った明太クリームそうめんが人気の「そそそ」(恵比寿、渋谷、日比谷)、豆乳を使ったそうめんが話題の「はやし」(大井町、中目黒、武蔵小山)、全国の手延べそうめんが選べる「まほろば」(西荻窪)など。
福岡市の中洲には、島原そうめんを使い、飲んだ後の〆(し)めそうめんがおいしい「元祖 中洲そうめん
臣屋(じんや)」もあります。どうでしょう、ご当地手延べそうめんを巡る旅に出かけてみませんか?
(出典:「旅行読売」2022年9月号)
(WEB掲載:2022年10月30日)