【私の初めてのひとり旅】吉川正洋さん 箱根湯本、鉄道(2)

箱根湯本にはひとり旅の後も何度も訪れた。ロマンスカーの前で記念撮影
よしかわ・まさひろ[お笑い芸人]
1977 年、東京都生まれ。お笑いコンビ「ダーリンハニー」で活動。鉄道通の芸人として知られ、テレビ朝日「タモリ倶楽部」、NHK「鉄オタ選手権」など多くの鉄道関連番組に出演。レギュラーのCS鉄道チャンネル「新・鉄道ひとり旅」は2011年から続く人気番組。4月2日に新刊『ダーリンハニー吉川 妄想鉄道ガイドブック』(カンゼン)が発売予定。
鉄道ひとり旅にはまり、小学生で関東圏の私鉄制覇
【私の初めてのひとり旅】吉川正洋さん 箱根湯本、鉄道(1)から続く
ややマニアックですが、当時は小田原駅からは「三線軌条」が始まりました。同駅まで乗り入れていた箱根登山鉄道は軌間(レールの間隔)が1435ミリ、小田急線は1067ミリなので、1本は共通で、それぞれの軌間が1本ずつ、計3本のレールが敷かれているんです。それが珍しかったし、鉄道って面白いなと思いました。
箱根湯本駅に着くと、時刻は午後2時頃になっていました。お腹が空いて、改札を出た所にたこ焼きの屋台が出ていたので、1パック100円か200円のたこ焼きを買って、駅のベンチでふうふう言いながら食べました。たこ焼き屋のおじさんに「坊やどこから来たの?いくつだい?」と聞かれ、6歳で東京から来たと答えると、「そんな遠くから来たの、すごいな。たいしたもんだ」と感心され、うれしくなってちょっと誇らしく思いました。あの日の暑さとたこ焼き屋のおじさん、そしてたこ焼きのおいしさは忘れられないですね。
家に帰って母親に箱根湯本まで行ってきたよと話したら、めちゃくちゃ驚いていましたね。自分の中でも最初にひとりで箱根に行けたという自信がつきました。その後は、お小遣いをためて運賃表を眺めながら「ここ行けるな」と思ったらあっちこっちひとりで行っちゃう小学生になっていきました。毎年、夏休みにスタンプラリーに挑戦するなどして、小学校を卒業する頃には関東圏の私鉄全線を制覇するほどになりました。
鉄道好き芸人として活躍する現在の吉川さん(写真/阪口 克、天竜浜名湖鉄道新所原駅で)
家族旅行では親に鉄道旅をリクエストしました。豪華な寝台特急「北斗星」にも乗せてもらったけど、上野駅から札幌駅まで16時間、僕ひとりだけ興奮して一睡もせず、札幌に着いたらちょっと具合が悪くなって(笑)。
ただ鉄道で遠くに行ってみたいっていうだけなんですね。鉄道ひとり旅は、その日の気分でここに行ってみようというのが好きなんです。同じ路線でも乗るたびに発見がある。だから飽きることはありませんね。
話/吉川正洋 聞き手/田辺英彦
(出典:「旅行読売」2025年5月号)
(Web掲載:2025年7月3日)