【うわさの夏麺】広島で三大夏麺ホッピング
冷めん家の冷麺(普通)。麺は1玉~2.5玉から選べ、普通で1.5玉。辛さは7段階
ゴマの豊かな風味と、爽快な辛さが絶妙
冷たい麺と野菜を、別添えの冷たいタレで味わう広島スタイルのつけ麺は、戦後に中区八丁堀の中華料理店で始まったという。この店で一番弟子として修業した先代が、つけ麺専門店として1985年に創業したのが冷めん家だ。
「広島つけ麺のことを、元祖の系列店では冷麺と呼ぶんです」とは2代目の角中(かどなか)賢太さん。麺の上にたっぷり載せる野菜は、産地にこだわらず全国から状態の良いものを毎朝仕入れて仕込むので、新鮮でシャキシャキ、味わいも抜群だ。赤身の多い豚もも肉を使った自家製叉焼(チャーシュー)の滋味深さとも相性が
いい。
朝一番に仕込むスープは、化学調味料や添加物、塩を一切使わず、クリアな味わい。スープで割るタレに加えるゴマは、毎朝すりおろすから風味豊か。自家製ラー油の後を引く辛さと旨味もやみつきになりそう。野菜や叉焼の味わいと、特注麺のつるりとした喉越しを存分に引き立ててくれる。
冷めん家 大手町店
11時~13時50分、18時~20時50分
日曜・祝日休
TEL:082-248-7600
広島駅から広島電鉄宇品線14分、本通駅下車徒歩3分
朝挽き花椒の刺激的な香りとしびれる辛さ
広島の担担麺は、お好み焼きでおなじみの中細麺を使う汁なしがポピュラー。かつて広島市内を中心に2度ブームがあり、現在は名店だけが残ると言われている。中でもキング軒は専門店だけあり、麺、タレ、具材すべてに隙がない。
「タレがなくなるまで混ぜてから、花椒(ホワジャオ)をふってお召し上がりください」と店主の渡部崇(たかし)さんの教え通り、しっかり混ぜ、担担麺の命・四川(しせん)産の花椒をふりかける。柑橘(かんきつ)系の爽やかな香りが立ち上り、食欲は頂点に! 花椒は香りと味を重視し、毎朝挽(ひ)くそうだ。
廿日市(はつかいち)市で70年続く製麺所の低加水麺は歯応えがすごい。噛(か)むほどに小麦の甘みも感じられる。1か月半以上寝かせた自家製五香辣油(ウーシャンラーユ)の辛みと、国産豚挽き肉の旨み、特注の川中しょう油と豆鼓(とうち)の香気ある塩味(えんみ)、さらに倉橋産宝島ネギすべてが見事に口中で混じり合い、広がる。そして後からじわじわ来る花椒のしびれ、清々(すがすが)しい余韻に暑さも吹き飛ぶ感動の一杯だ。
汁なし担担麺専門 キング軒 大手町本店
11時~15時、17時~20時、土曜・祝日11時~15時
日曜休
TEL:082-249-3646
広島駅から広島電鉄宇品線17分、中電前駅下車徒歩3分
チュルチュルチュルンの平打ち麺とワンタン
冷麺と言えば関東では韓国冷麺、関西では冷やし中華を思い浮かべる人が多いだろう。そして広島なら呉(くれ)冷麺だ。呉市で戦後、屋台から始まった珍来軒(ちんらいけん)の初代が考案。特徴は平打ち麺だ。呉龍の先代は珍来軒初代の親戚で、 同店で修業し、1980年に独立。現在はその父の味を姉弟が守る。
スープも特徴的で、甘酢ではなく塩味。「鶏ガラベースのスープは創業時から注ぎ足して使っています。2日間寝かせて味の角(かど)を取り、チャーシューを煮たタレを加えています」と2代目店主。卓上の酢辛子を入れると、不思議と味わいが柔らかくなる。
麺は父の代から地元の製麺所で特注。ソフトでチュルンとした喉越しが暑い夏にはたまらない。平打ち麺だからスープがよく絡む。売り切れ御免の人気トッピング、ワンタンは父考案のオリジナル。特注の薄皮は麺同様チュルンとしていて、ニンニク香る甘めの豚ミンチがクセになる。
中華そば・冷麺 呉龍
11時30分~15時
月曜休
TEL:0823-23-7997
山陽線呉駅から徒歩15分
文/児島奈美 写真/宮川 透
(出典:「旅行読売」2022年9月号)
(WEB掲載:2022年10月31日)