駅舎のある風景 舞田駅【上田電鉄別所線】
初夏の塩田平の田園を行く温泉電車
上田駅から上田電鉄に乗り、別所温泉へ向かった。
途中、中野駅を過ぎると、列車は塩田平(しおだだいら)の傾斜地を、終点の別所温泉駅に向けて駆け上がっていく。鎌倉時代に塩田北条氏が治めていたことから、この辺りは〝信州の鎌倉〟と呼ばれ、古い寺も多い。
塩田平の真ん中に、小さな待合室だけの舞田(まいた)駅の駅舎が立っている。田園を吹き抜ける風が、ホームに沿って植えられた桜の木の葉を揺らし、その背後には、切り立った峰が連続することから〝信州の妙義山〟と呼ばれる独鈷(とっこ)山の山容が顔をのぞかせている。そこにはすがすがしい初夏の風景が広がっていた。
別所線は、2019年の台風で被災した千曲川橋梁が今春、復旧したばかり(※2021年掲載時)。近い将来、この美しい駅を再び訪ねてみたい。
文・写真/越 信行
上田電鉄別所線は、前身の上田温泉電軌が1921年開業。舞田駅も同年開業。上田駅から23分
(出典:「旅行読売」2021年6月号)
(WEB掲載:2023年1月5日)