【愛しの冬列車】只見線が全線運転再開! 豪雪地帯のローカル線にもう一度(1)
会津中川-会津川口駅間の「奥会津ビューポイント かねやまふれあい広場」から。中央奥に見える集落は「日本のスイス」と呼ばれる大志(おおし)集落(写真/星 賢孝)
雪山がきらめき、水面が輝く冬の只見線
全身の震えが止まらなかった。寒さのためではない。無風、快晴。見下ろす只見川の水鏡に青空と緑の木々が映り、川岸に線路と道路が延びている。やがて2両編成のディーゼルカーが警笛を響かせ、眼下の早戸駅に止まった。ほどなく走り出した列車はゆっくり遠ざかり、奥会津の山中へ去っていった。たなびく雲の上に山々の頂が続いていた。奥会津郷土写真家・星 賢孝さんの言う「超絶の絶景」に、体が無意識に反応し、震えた。
星さんが案内してくれたその場所は、早戸駅近くの集落から坂を上った展望所。冬は水鏡も空もさらに輝き、この時期ならではの絶景が広がる。展望所はまだ整備途上のため正確な名称、場所をお伝えできないのが残念だ。実はこの場所は、星さんが土地の所有者の許可を得て通路を開き視界を遮る木を切った、手作りの展望所だ。
沿線の人々の胸中に浮かぶ言葉「災い転じて福となす」
この穏やかな只見川が、あれほどの災害を引き起こしたとは信じられない。災害から11年の時を経て2022年10月1日に全線で運転を再開した今、沿線の人々の胸にあるのは「災い転じて福となす」の言葉。「空気を運んでいるだけ」と揶揄(やゆ)された只見線の復活を、未来を、多くの人がそれぞれの立場の垣根を越えて考え話し合い、新しい結び付きが芽生えた。
例えば、「奥会津温泉郷協議会」。只見線沿線には湯治場に端を発した小さな温泉宿が点在している。そのうち13軒の宿と、食堂や関連企業などがスクラムを組み、里山を守り最高のおもてなしをするために団結した。今回は、そのうちの2軒を巡るモデルコースを組んでみた。