【愛しの冬列車】只見線が全線運転再開! 豪雪地帯のローカル線にもう一度(2)
湯倉温泉 旅館 鶴亀荘の露天風呂。只見川の向こうに只見線が見える。露天風呂は男性用浴場のみにあるが21時~22時は女性専用になる
只見線復活の原動力になった人々の熱意
【愛しの冬列車】只見線が全線運転再開! 豪雪地帯のローカル線にもう一度(1)より続く
1泊2日で只見線を旅するモデルコースのスタートは、新潟県側の小出駅。只見駅を過ぎて本名(ほんな)駅で下車し送迎5分、湯倉温泉の「旅館 鶴亀荘」に向かう。
65年の歴史がある宿の女将、吉野美喜子さんは、「只見線は本数が少ないから、列車の音が聞こえると今何時かって分かったの。それがしばらく途絶えて寂しかったけど、再開した時には只見線はまだ生きてるぞ!って、目頭が熱くなった」と話す。小さな宿なのでかつては取材などを断っていたが、只見線のためになるならばと今は歓迎。只見線が結んでくれた縁を感じた。
アクセスも良い撮影ポイント「かねやまふれあい広場」
翌日は会津川口駅で途中下車し、歩いて10分ほどの「奥会津ビューポイント かねやまふれあい広場」へ。国道252号沿いにある撮影ポイントで、車で訪れる鉄道ファンも多い。只見線は列車の本数が非常に少ないので、通過時刻は事前に必ず確認を。会津川口駅は金山町の中心部にあり、食事処もあるので安心だ。
民芸品「赤べこ」の発祥地、柳津温泉へ
会津若松駅へ向かう途中の会津柳津(やないづ)駅は、民芸品「赤べこ」にもなった福を運ぶ「赤べこ伝説」発祥の地。約1200年前に開かれた福満虚空藏菩薩圓藏寺(ふくまんこくぞうぼさつえんぞうじ)の門前に温泉街があり、ここでもう1泊してもいい。
駅から徒歩10分の花ホテル滝のや&アネックスの主人、塩田恵介さんは、只見線車内での結婚式などを企画したアイデアマン。「災害がなければ今あるようなネットワークはできなかった。沿線住民の只見線を復活させてほしいという思いを、ひしひしと感じた。今後は、おもてなしの心をもっと磨きたい」と語る。
鉄道は、鉄道会社だけの力で走る乗り物ではない。沿線の人々の熱意や希望や愛、鉄道ファンの思いを乗せて走る。只見線に限らず、ほかの多くの鉄道も同じであろう。奇跡とも言われる復活を遂げた只見線は、その象徴である。
文/渡辺貴由 写真/齋藤雄輝