【石井宏子さんが選ぶ 私の極上温泉】下風呂温泉 ホテルニュー下風呂
ひと晩中入れる源泉かけ流しの大浴場
いしい ひろこ
トラベルジャーナリスト。年間200日ほど国内外の温泉を旅する。雑誌や新聞などに旅コラムを書き、テレビ・ラジオにも出演。温泉や食、自然環境を通じて美しくなるビューティツーリズムを研究。著書は『全国ごほうびひとり旅 温泉手帖』(世界文化社)、『感動の温泉宿100』(文藝春秋)ほか
本州北の果てで、こくまろの硫黄泉につかる
本州最北端の駅、大湊線下北駅から路線バスに乗り北へとひた走る。海辺の道のカーブを過ぎると下風呂(しもふろ)温泉郷だ。下風呂漁港を見下ろす場所に宿が並び、ホテルニュー下風呂はその中程にある。
部屋の窓を開けると潮の香りと波の音、漁船を追いかけてきたカモメや海鳥の声がする。沖には北海道。海峡という響きがぴったりの場所だ。
11月はスルメイカやミズダコ、12月からは鮟鱇(あんこう)漁でにぎわう。漁場が近い風間浦鮟鱇は生きたまま水揚げし活締めされる。新鮮な刺し身をあん肝醤油で味わうのは冬の下風呂温泉ならではのごちそうだ。
下風呂温泉には大湯、新湯、浜湯と三つの系統の異なる源泉があり、宿によって引いている温泉が違う。ホテルニュー下風呂は、浜湯系の源泉で青白いにごり湯。大浴場に近付いただけで、ぷーんと硫黄の匂いがする。湯に入ってみると塩湯の個性も感じられる。硫黄も濃いが、塩も濃い、海の潮の香りも潜んでいる。
こっくりとまろやかな感触の「こくまろ温泉」にすっかり魅了され、何度も通うようになった。含硫黄―ナトリウム―塩化物泉で、総硫黄25・4ミリ・グラム(1キロ中)、成分総計は1キロ中に4・895グラムと濃厚。やわらかな湯に包まれて血行が促進され体の芯まで温まり、ストレスも疲れも湯の中へと溶けていくようだ。
部屋へ運ばれてきた食事は、潔いほど海の幸尽くし。目の前の海からいただく魚介のおいしい栄養は、元気な肌と体の源にもなる。
文・写真/石井宏子
料金:1泊2食平日・休前日1万4300円~
客室:全24室
食事:夕食=部屋、朝食=食事処
泉質:含硫黄―ナトリウム―塩化物泉
貸切:なし
※料金は雑誌掲載時の金額です
TEL:0175-36-2021
住所:青森県風間浦村下風呂67-2
交通:大湊線下北駅からバス1時間、下風呂下車徒歩2分/上北道七戸ICから100㌔
(出典:「旅行読売」2022年12月号)
(Web掲載:2023年1月29日)