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僕が好きな冬列車 ダーリンハニー・吉川正洋さん

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僕が好きな冬列車 ダーリンハニー・吉川正洋さん

「鉄道芸人」として数多くの鉄道番組に出演しているダーリンハニー・吉川正洋さんに、これまで乗ってきた鉄道の中で、もう一度冬に乗りたい列車を教えてもらった。写真は只見線

 

全線運転再開! 只見線は何度乗ってもいい

11年前の豪雨災害で会津川口―只見(ただみ)駅間が不通だった只見線が、2022年10月に全線運転を再開しました。何度も乗っていて、被災後、只見駅前で俳優の六角精児(ろっかくせいじ)さんのバンドが応援ライブをしたときは司会を務めました。只見線は四季が濃厚に感じられるという印象が強いです。新緑の頃は緑が濃く、夏は川霧が幻想的。梅雨時だったか、川から霧が立ち上り、山間部を覆う様子は忘れられません。秋の紅葉はいうまでもなく、一面真っ赤。圧巻です。

そして冬は白一色。只見川に寄り添うように走る只見線は、橋を渡る瞬間、川と山の織りなす景色にハッとさせられます。ほとんど山と川の雪景色がずっと続くだけですが、乗っていて全然飽きません。ローカル線特有のゆったりした時間の流れに癒やされる一方で、山間部の豪雪地の自然の厳しさも感じられます。僕は車内でぬくぬくと、会津の地酒など飲んでいるんですが(笑)。

「反射鉄」という僕独自の楽しみ方があり、車両と自分がビルの窓ガラスなどに反射して写っているのを見るのが好きなんです。冬の只見川は特に〝鏡感〟が強く、白銀の世界が鏡に写り込んだ気分です。只見線と冬景色を捉えた写真が、国際フォトコンテストで最優秀賞に選ばれたというニュースを見たときは、この風景が世界に認められたのが自分のことのようにうれしかった。自然豊かで、昔のテレビアニメ「まんが日本昔ばなし」に登場する故郷(ふるさと)の風景の中を旅しているような感覚です。

自然災害で被災した地方路線は、そのまま廃線になってしまうことも多いのですが、只見線が復活したのは大きな希望です。僕たちがメディアなどでPRして魅力を伝えていかなくてはなりませんね。

秋の只見線車窓
再開前は写真の只見駅から会津宮下駅まで代行バスが運行していた

石北線のラストラン車両に乗る

冬といえば、北海道の鉄道も好きです。北海道の石北線を走る特急「オホーツク」「大雪(たいせつ)」の車両は来春に引退予定なので、この冬がラストラン。現行車両は1986年に運転を開始した道内最古の特急気動車キハ183系です。子どもの頃、上野駅から寝台特急「北斗星」に乗って北海道旅行したとき、当時まだ新しかったキハ183系車両で道内を巡った記憶があります。2023年の春以降は、キハ283系に替わるようです。

石北線は山間部が多く、上り下りが延々と続きます。上川駅と白滝駅の区間は37.3㌔もあり、在来線では日本最長。山手線1周よりも距離が長いんです。途中にあった駅はみな廃止になってしまったんですね。北の大地のバーンとした広がりや派手さはないけれど、リアルな北海道を体感できます。先頭と最後尾に「かぶりつきシート」が設けられ、展望が楽しめるのもいいですね。

途中も見どころがあります。遠軽(えんがる)が駅は珍しいスイッチバックが特徴で、進行方向が変わります。北見はタマネギの生産量が日本一で、臨時の貨物列車「タマネギ列車」が8月〜翌年4月、北見—旭川駅間を1日1往復しているのも、らしい光景。網走(あばしり)駅からバスで行ける網走湖では氷上のワカサギ釣りが人気です。

石北線の特急「大雪」

暖かい車両で食事と地酒と車窓を楽しむ

冬景色を見ながら、あったかい車内でおいしい料理に舌鼓を打ち、お酒が飲める――「呑(の)み鉄」も鉄道旅ならではの特権です。

岐阜の恵那市内を走る明知鉄道は急行列車に食堂車を連結したグルメ列車を1987年に開始。観光列車の草分けです。1月〜3月は飲み放題の「枡酒列車」があり、12月〜3月は「じねんじょ列車」。僕は粘りものが大好きで、コロナ禍前にこれ目当てで乗りに行きました。月曜を除く毎日運行しているのも驚きです。滋味あふれるとろろがおいしいうえ、見知らぬ乗客同士で会話が弾み、気持ちもほっこり。ぬくもりを感じる観光列車でした。

新潟—酒田駅間を羽越線経由で走る快速「海里(かいり)」もおすすめです。新造ディーゼルハイブリッド車両は快適そのもの。ダイニング車両では下りは新潟の老舗料亭「一〆(いちしめ)」、上りは庄内の有名イタリアン「アル・ケッチァーノ」の料理が味わえます(予約制 ※掲載時の情報です)。冬の日本海のなんともいえない寂寥(せきりょう)感を感じながら、新潟の地酒を傾ける。「呑み鉄」には至福のひとときですね。

聞き手/田辺英彦

新潟・庄内の食と日本海の景観をコンセプトにした「海里」
車内で新潟の老舗料亭の日本料理や地酒が楽しめる

吉川正洋(よしかわ まさひろ)

1977年、東京都生まれ。お笑いコンビ「ダーリンハニー」で活動。鉄道ネタのコントや漫才を披露する一方、鉄道大好き芸人として鉄道関係のイベントやトークショーに引っ張りだこ。CS鉄道チャンネル「新・鉄道ひとり旅」のレギュラーとして、前身の「鉄道ひとり旅」から11年間続けて出演しているほか、NHK「鉄オタ選手権」や日本テレビ系「笑神様は突然に…」の「鉄道BIG4」のコーナーなどに出演。著書は『ダーリンハニー吉川の全国縦断鉄博巡り』

 

(出典:「旅行読売」2023年1月号)

(Web掲載:2023年2月3日)

☛移りゆく車窓の景色と心地よい列車のゆれ、鉄道の旅はこちら

 


Writer

田辺英彦 さん

東京都大田区出身、埼玉県在住。旅行ガイドブック編集・執筆、出版業界誌執筆などを経てフリーランスに。東北・八幡平の温泉群と、低山ハイク、壊れかけたもの・廃れたものが好き。

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