【旅の朝ごはん】にいがた朝ごはんプロジェクト(1)-ひなの宿ちとせ
「ひなの宿ちとせ」の朝食。中央の箱は「しろめしの友六品」。奥の小鍋は味噌仕立てで具だくさんの「スキイ汁」。サツマイモをスキー板に見立てた。左下が「とろろ朝まんま」。右下の「みらい納豆」は粒が大きい「さといらず(砂糖要らず)豆」を使用
全県で朝ごはんを盛り上げるプロジェクトを展開
「にいがた朝ごはんプロジェクト」は、「日本一の米どころ新潟のおいしいコシヒカリを、その土地の水で炊き、その土地で採れた食材で作ったおかずとともに食すこと」をモットーに、13地域・115軒の宿が参加して2011年秋に始まった。プロジェクトの定義は三つ。①県内産コシヒカリを使用、②県内産食材を使用した各地域内共通の朝食を提供、③県内産の総菜食品「にいがたごはんの素」の開発・販売。
今では季節ごとに内容をアレンジしながら展開。2月28日までの「2022〜2023冬篇」シーズンには、22地域・64軒の宿が参加している。その中から十日町市、湯沢町の3軒を訪ねた。今は雪に埋もれた田んぼが育む極上のコシヒカリを存分に味わった。
原点は「ここにしかないもの」
「にいがた朝ごはんプロジェクト」の発起人は、松之山温泉にある「ひなの宿ちとせ」の柳 一成社長だ。きっかけは、「ここにしかないもの、昔から大切にされてきたものを改めて提示することが、今の時代ではむしろ新鮮なのではないか」という思いだった。
上記のプロジェクトの定義の②、「地域内共通の朝食」は、松之山温泉では「とろろ朝まんま」。自然薯を使った一品だ。ちとせでは味噌仕立てのとろろ汁を大根おろしでのばす。味噌の甘みとダイコンのピリッとした風味が相まって、かき込むようにごはんが進む。
「昔から大切にされてきた味」をシンプルに伝える
さらには、妻有(つまり) ポークの甘辛そぼろ、温泉が染み込んだ塩豆腐、雪国まいたけ辛子和えなど、「しろめしの友六品」と名付けられた常備菜だけでも箸が止まらない。驚いたのは煮菜(にいな)。野沢菜を炒めて煮たシンプルな一品で塩味がほどよい。漬け込みの時間がたって酸味が増してきた野沢菜を最後までおいしく味わうための知恵が受け継がれている。これぞ「昔から大切にされてきたもの」。柳社長の思いとともにじっくり噛か み締めた。
文/渡辺貴由 写真/齋藤雄輝
ひなの宿ちとせ
℡025-596-2525
料金:1泊2食1万7750円~(ひとり泊は同2万8310円~)
客室:27室
食事会場:朝食・夕食=食事処
アクセス:北越急行ほくほく線まつだい駅から送迎15分(要予約、14時15分、16時10分、17時10分発)/関越道塩沢石打ICから35キロ
住所:新潟県十日町市松之山湯本49-1
(出典:「旅行読売」2023年3月号)
(Web掲載:2023年10月1日)