駅舎のある風景 石鎚山駅【予讃線】
霊山を仰ぎ見る参道前の小さな駅
四国中央部を東西に貫く四国山地に、四国地方一にして西日本最高峰でもある標高1982㍍の石鎚山(いしづちさん)はそびえる。
修験道の祖、役小角(えんのおづぬ)が開山したとされ、日本七霊山の一つにも数えられる。古くから崇拝されてきたその山の頂には奥宮頂上社(おくのみやちょうじょうしゃ)が、中腹には中宮成就社(ちゅうぐうじょうじゅしゃ)と土小屋遥拝殿(つちごやようはいでん)がある。そして麓にある口之宮本社(くちのみやほんしゃ)を合わせた四社を石鎚神社と呼ぶ。
石鎚山(いしづちやま)駅はその口之宮本社の近くにある。古くから使われている小さな駅舎を出るとすぐに、口之宮本社の参道に立つ鳥居が見える。
ホーム前に広がる田んぼの側で鳥居と石鎚山をバックに駅を撮影していると、四国八十八ヶ所霊場第64番札所の石鈇山前神寺(まえがみじ)へと向かうのだろうか、笠をかぶったお遍路姿の乗客が、到着した列車から降りてきた。
信仰を集める石鎚山麓の小さな駅の光景を眺めていたら、私自身も心浄(こころきよ)められた思いがした。
文・写真/越 信行
予讃線は1945年全線開通。石鎚山駅は1929年開業。松山駅から普通列車で約2時間
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(出典:「旅行読売」2021年12月号)
(Web掲載:2023年3月24日)