【桜の咲く駅へ】中央線・身延線で巡る山梨桜回廊(1)甚六桜
甚六桜が咲く勝沼ぶどう郷駅は1993年までは勝沼駅の名称で親しまれ、古いホームの様子も再現されている。写真左側に現在の線路がある(写真/ピクスタ)
駅を包む1キロの桜並木と甲府盆地の絶景
今年はいつになく春が待ち遠しい。家族や友人と語らいながら笑いながら、久しぶりに気兼ねなく花見を楽しめるだろう。ローカル線で遠慮なく遠出もできそうだ。
早速、時刻表を開いて定めたお花見ルートは、中央線から身延線に乗り継いで1泊2日でたどる「山梨桜回廊」コース。駅を包む桜並木、日本を代表する名木、聖地のシダレザクラの下で「ひさかたの 光のどけき 春の日」を過ごしたい。
スタートは新宿駅。中央線で一路西へ向かう。都県境の山あいを抜け、勝沼ぶどう郷駅が近づいたら心の準備をしておこう。同駅のすぐ手前、新大日影トンネルを抜けた途端に、車窓は暗転後の舞台のごとく一変する。トンネル出口からソメイヨシノの並木が約1㌔にわたって続き、線路際まで見事な枝が伸びている。「甚六桜」と呼ばれる山梨屈指の「駅の桜」だ。
列車の風圧で幻想的に舞い上がる桜の花びら
眼下には甲府盆地が開け、伸びやかな風景が開放感を添える。遠くには南アルプスの山並みが続いている。あちらこちらで老若男女が花見に興じている。そして列車の風圧で舞う花吹雪……。絵にかいたような「日本の春」が待っている。
甚六桜は50年ほど前、「自分たちで植えて育てて、年寄りになった時に孫と一緒にお花見をする場所を作りたい」という地元の人々の願いが発端だった。それが今や各地から花見客が集う桜の名所となった。「この桜を確実に次の世代へつなげたい」と、地域住民が管理を続けている。作業を通じて、人と人の絆も強固に保たれているという。
花見の後は、民家の縁側で甲州ワインを
勝沼ぶどう郷駅から徒歩5分にあるKatsunuma縁側茶房は、築180年になる民家の縁側で、斜面に広がるブドウ畑を眺めながら食事やドリンク、軽食を味わえる。ブドウ農家も営み、自家製のブドウや野菜、地元の食材を店主の三森由美子さんが心温まる料理に仕上げる。春の暖かな日差しに包まれると、いつまでも座っていたくなる。
文/渡辺貴由
【桜の咲く駅へ】中央線・身延線で巡る山梨桜回廊(2)山高神代桜へ続く
Katsunuma縁側茶房
築180年になる民家の縁側で、斜面に広がるブドウ畑を眺めながら食事やドリンク、軽食を味わえる。ブドウ農家も営み、自家製のブドウや野菜、地元の食材を店主の三森由美子さんが心温まる料理に仕上げる。春の暖かな日差しに包まれると、いつまでも座っていたくなる。
■4月~11月の土・日曜、祝日の12時~17時30分のみ営業。ほかは3000円のコース料理のみ要予約(11時30分~)で受け付ける/勝沼ぶどう郷駅から徒歩5分/TEL0553-39-9091
甚六桜
見頃:3月下旬~4月上旬
勝沼ぶどう郷駅を包むようにソメイヨシノが咲く。名前は地元菱山地区の跡取りが集まって1973年に発足した「甚六会」に由来。甚六会では、77年から約1000本の桜を植栽。下草刈りや消毒などを続け、今の桜並木が誕生した。
■見学自由/勝沼ぶどう郷駅からすぐ/℡0553・32・2111(甲州市観光協会)
(出典:「旅行読売」2023年4月号)
(Web掲載:2023年3月29日)