【桜の咲く駅へ】中央線・身延線で巡る山梨桜回廊(2)山高神代桜
1年かけて蓄えた力を花に注いで咲き誇る山高神代桜(写真/ピクスタ)
「神の代」から咲き続ける樹齢2000年の古木
【桜の咲く駅へ】中央線・身延線で巡る山梨桜回廊(1)甚六桜から続く
桜回廊をたどる旅は、中央線をさらに西へ。甲府駅を過ぎ、北杜市の日野春駅へ向かう。いかにも里山の春を思わせる駅名である。ここからタクシーで15分、日蓮宗の古刹、實相寺へ。山門をくぐり本堂に参って左手奥へ進むと待っているのは、樹齢2000年、日本三大桜の一つの山高神代桜だ。
樹齢2000年ともなると幹は岩塊のごとくに黒く太く、「鎮座する」という表現がふさわしい。支柱に守られた枝は痛々しくも思えるが、その姿こそが2000年生きた証しでもある。
古木が示す生命の強さと尊さ
今でも相当な巨木だが、100年ほど前に国の天然記念物第1号に指定された当時、枝張りは東西27㍍、南北30㍍もあったという。現在の倍以上である。その違いが一目瞭然となるのが、明治の終わりに撮影された下の写真だ。
往時の枝ぶりを取り戻すことはできないが、今も天に向かって枝を伸ばす。春、枝先を埋める満開の花は命のたくましさを教えてくれる。古木の周囲には若々しい子桜が育っている。さらに福島の三春滝桜や岐阜の淡墨桜の子桜も大きく育っていて、日本三大桜をここで見比べられるのもこの古木があってこそ。時代を超えて桜の物語は続いていく。
文/渡辺貴由
山高神代桜
見頃:4月上旬~中旬
樹齢2000年ともいわれるエドヒガン種の古木は、日本三大桜の一つ。甲斐国・武田家の永代祈願所でもある實相寺の境内にあり、1922年に国の天然記念物に指定された。何度も自然災害に見舞われたが、現在も高さ約10㍍、周囲約12㍍の巨木として堂々たる姿を保つ。枝を支える支柱に人々の願いが込められている。
■見学自由/日野春駅からタクシー15分/℡0551-30-7866(北杜市観光協会)
(出典:「旅行読売」2023年4月号)
(Web掲載:2023年3月29日)