フルーツだけじゃない、モノづくりの町【山形県寒河江市】
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山形県のほぼ中央、山形駅からJR左沢(あてらざわ)線で約30分の寒河江(さがえ)市。サクランボやラフランス、ブドウなど、フルーツの生産が盛ん。
特にサクランボは全国的なブランドである「佐藤錦」のほか、実が締まって日持ちがいい「紅秀峰(べにしゅうほう)」があり、紅秀峰は同市にある農業試験場で生まれた品種だ。
フルーツのイメージが強いため、寒河江市が「モノづくりの町」でもあると聞くと、ピンとこないかもしれない。
モノづくりの一つが繊維業。同市に本社と工場がある佐藤繊維は1932年創業で、原料調達から糸づくり、ニット製品の製造・販売まで一貫して行っている。
「ウールは自然からの贈り物である」とし、天然素材を細く高品質な糸に仕上げる。その質の高さからニナリッチやシャネルなど、海外の有名ブランドからの注文も多い。
アメリカのオバマ元大統領夫人が、大統領就任式やノーベル平和賞受賞式で着用したカーディガンの糸は同社のものである。
佐藤繊維の自社ブランドの商品や国内外からセレクトした雑貨を、酒蔵を改装した石蔵「GEA」内の店舗で販売している。
カフェレストランもあり、山形の山海の幸を使ったイタリアンを味わえる。
創業1913年の軽部草履(かるべぞうり)は職人の手編みにこだわった伝統の草履づくりをしている。かつては4大産地の一つとされた山形草履だが、ライフスタイルの変化で草履メーカーの多くはスリッパなどに転業した。そんな逆風の中、大相撲の行司や祭事、歌舞伎や日本舞踊など、日本の伝統文化の足元を支えている。
軽部草履では、草履づくりを体験することができる(11月~4月限定、要予約)。竹皮で編んだ草履に穴をあけて自分で選んだデザインの鼻緒を通し、底に糊をつけてソールを貼る。鼻緒の位置は履き心地に直結するため、気を遣う。
職人の手を借りながら、1時間近く掛かって完成した。草履は職人が編んだものが用意されるが、その作業は職人でも熟練の技を要する。工程の一部とはいえ、自らが関わった草履は愛着が湧く。暖かい季節になって履くのが待ち遠しい。
市の郊外にある慈恩寺(じおんじ)は724年、僧・行基が聖武天皇に奏上し開基したとされる古刹。
境内には国重文の本堂のほか、三重塔や山門、薬師堂などが立つ。薬師如来像や十二神将立像など、国重文の仏像も多い。写経体験もできる(要予約)。
寺から歩いて10分ほどのところに2021年にオープンした慈恩寺テラスでは、大型ラウンドシアターやジオラマのプロジェクションマッピングで、寺の歴史や広大な境内の役割や様子を知ることができる。館内にはカフェレストランがあり、スイーツも楽しめる。
寒河江で泊まるなら強調したいのが、駅から徒歩圏内に温泉宿が9軒あること。
1954年に湧出した新しい温泉だが、その泉質が素晴らしい。薄く緑がかった炭酸水素塩泉で、肌に触れるとすべすべする。温度が40度台のため、加水加温なしのかけ流しなのは天の恵みといえる。
夜の町での楽しみはやきとり。寒河江のやきとりは主に豚モツで、多くの飲食店で味わえる。市内には三つの酒蔵があるので、地酒と合わせて一献傾けたい。