【旅する喫茶店】赤い屋根の喫茶店「駅舎」(五所川原)
店名通り赤い屋根が特徴の「駅舎」。「日本さくら名所100選」の芦野公園は4月下旬~5月上旬に桜が咲く
旧駅舎の店内で感じる津軽の四季
本州最北の私鉄・津軽鉄道にある芦野(あしの)公園駅は、県立自然公園の中にある珍しい駅だ。そのホームと直結する赤い屋根の喫茶店「駅舎」は、1975年まで実際の駅舎だった木造平屋建ての建物を活用している。1930年の津軽鉄道開業当時から残る唯一の建物は、国の登録有形文化財になっている。
扉を開けると店内には、駅務室と待合室を隔てたカウンターが残り、壁掛けの手回し式固定電話や当時の利用客向けの案内板などが、現役だった昭和の頃の面影を伝えている。
店主の栄利有夏(さかりゆか)さんは「学生時代に友達との待ち合わせに使った駅を、まさか自分がお店として経営することになるとは」と、サイフォンでコーヒーをいれながら笑顔で語る。地元出身の栄利さんは約10年前に「駅舎」で働き始め、のちに独立して自分の店にしたという。
看板メニュー「スリスリりんごカレー」は、青森のふじリンゴをすりつぶした果肉がたっぷり入った手作りカレー。日替わりの「りんごケーキ」も青森県産リンゴを使った手作りで、「店の雰囲気を大事にしたい」という栄利さんの思いが伝わるような味わい。そのほかのメニューも青森産にこだわったものばかりだ。
春は桜のトンネルを抜け、冬は雪深い公園内を走る列車が、窓の外のホームに止まるのが見える。四季に彩られる津軽を感じられる店だ。
文/工藤 健
住所:青森県五所川原市金木芦野84-171
営業:10時~ L.O.16 時30 分/水曜休
交通:津軽五所川原駅から津軽鉄道30 分、芦野公園駅下車すぐ
TEL:0173-52-3398
※掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2023年5月号)
(Web掲載:2023年4月22日)