駅舎のある風景 葛岡駅【仙山線】
ホームから見る木々の新とヤマボウシの白い花
広瀬川沿いに湧く「仙台の奥座敷」作並(さくなみ)温泉へ向かう途中、車窓が市街地から樹林地へと変わった所にある、葛岡(くずおか)駅に降り立った。
斜面地の上にあるホームからは、仙台が「杜(もり)の都」と呼ばれる所以(ゆえん)である木々に覆われた丘陵地を望み、ロータリーは白いヤマボウシの花に包まれている。無人の小さな駅から坂を下って行くと、水清き川の瀬音が聞こえ、南には緑目映(まばゆ)い青葉の森や金剛沢治山(こんごうさわちさん)の森が続いている。
仙山線はここから、丘陵の裾野を広瀬川に沿って山あいへと分け入っていく。ゴリラの顔に似ていることから俗に〝ゴリラ山〞と呼ばれている、鎌倉山の独特な山容が車窓に見えると、鉄道の交流電化発祥の地である作並駅も近付き、心が弾んだ。
文・写真/越 信行
JR仙山線は1937年全線開業。葛岡駅は1991年に開業。仙台駅から普通で約20分
(出典:「旅行読売」2022年月6号)
(Web掲載:2023年4月28日)