【旅の朝ごはん】福井市で評判の宿の朝ごはん「お幸ざい」とは⁉
ご当地グルメのおろしそばも食べられる福井国際観光ホテル リバージュアケボノの朝食
福井国際観光ホテル リバージュアケボノ
私のふるさと福井の人間は、見どころやグルメを問われると「なんもない」と言いがちだ。そんな地域で現在、宿の朝食「お幸(こう)ざい」なるものが注目を集めているらしい。観光客向けに開発されたB級グルメだろうか。年末帰省の折、実態を確かめるべく福井国際観光ホテル リバージュアケボノを訪れた。
およそ60品目の小鉢がずらりと並ぶバイキング会場で、料理をパズルのごとくお盆に載せていく途中、あれ?と気付く。麩(ふ )の辛子和え、花らっきょうなど「実家で普通に食べるやつ」が紛れ込んでいたのである。聞けば、「お幸ざい」とは、福井の素材を使って伝統的調理法で作った昔から食べられているおそうざいの総称で、名はこの地が幸福度全国1位であることに由来するという。
お幸ざいの代表格「たくあんの煮たの」をかみしめると、ふいに子ども時代の記憶がよみがえる。夕暮れの家路で、ぬかを何十倍にもしたような匂いを嗅(か) ぎ、「この家、たくあん煮てる」と思ったこと。地元を離れた今では、こんな体験も懐かしい。
「家の味」以外にも、おいしそうな地元料理が所狭しと並び、それぞれに説明が付いている。私より旅行者のほうが「福井の味」を体系的に学ぶ機会に恵まれているのでは。羨(うらや)ましさを覚えつつ、里芋の煮っころがしのねっとりした食感を味わった。
宝永旅館
お幸ざいを宿泊客以外に提供する旅館もあり、地元のおばちゃんも連れ立って食べにくるらしい。そんな話を聞き、翌朝、宝永旅館を訪ねた。
「宿泊客と地元の人が情報交換できる場を作りたくて朝食(1000円、要予約)提供を始めた」と女将の国広桂子さん。観光客に対して最初こそ「なんもない」と控えめの福井人も、やがて心を開き「時間あるなら、あっこ行ってみねの」と言い出すそうだ。
お膳に準備された網の上で、魚のぬか漬け「へしこ」と「厚揚げ」があぶられている間、誰に説明されるでもなく、「もみわかめ」をごはんにかけ、磯の香りと天然の塩味をほかほか味わった。どれだけ離れて暮らしていようが、郷土の食べ方は身になじんだままで、無意識に実践できる。
「なんもない」のではなく、郷土料理だけで食卓が完成するほど「なんでもある」のだ。各々の印象は少し弱めでも、総体として力を発揮すする。地元の新たな一面を見つけたようでうれしくなった。
文・写真/蜂谷あす美
TEL:0776-22-1000
交通:北陸線福井駅から徒歩10分/北陸道福井ICから5キロ
住所:福井県福井市中央3-10-12
料金:1泊朝食6200円~、1泊2食1万3900円~(1人1室は1泊朝食7600円~、1泊2食1万5300円~)
※朝食の提供は宿泊客のみ。掲載時のデータです。
TEL:0776-22-5204
交通:北陸線福井駅から徒歩10分/北陸道福井ICから5.5キロ
住所:福井県福井市宝永3- 7-16
料金:1泊朝食8800円~、1泊2食1万3200円~(1人1室も同料金)
※掲載時のデータです
(出典:「旅行読売」2023年3月号)
(Web掲載:2023年5月14日)