駅舎のある風景 揖斐駅【養老鉄道】
終点の田園にたたずむ瓦屋根の木造駅舎
養老鉄道養老線は当初、福井県の敦賀と三重県の四日市を結ぶという壮大な構想があったようだが、現在運行しているのは大正時代の1919年までに開業した桑名-揖斐(いび)駅間57.5㌔だけだ。
大垣駅から北側の区間、列車は伊吹山地の裾野に広がる濃尾(のうび)平野の田園地帯をのんびりと走る。桜の名所として知られる霞間ヶ渓(かまがたに)の最寄りの池野駅を過ぎてしばらくすると、終点の揖斐駅に到着した。
駅舎は、昔ながらの瓦屋根が目を引く古い木造で、ホーム前の田んぼから見ると、夏空と山並みを背に青稲に浮かぶように立つ姿が、いっそう映える。
近くの揖斐川支流の粕川が流れ出す背後の山あいには、〝岐阜のマチュピチュ〟と呼ばれる天空の茶畑があるという。清々しい絶景に思いを馳せ、車止めのある駅をあとにした。
文・写真/越 信行
養老線は初代の養老鉄道によって1919年に全線開業。揖斐駅も同年開業。大垣駅から25分
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(出典:「旅行読売」2022年8月号)
(Web掲載:2023年5月17日)