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【家康の城へ】乱世を生き抜く知略で築いた名古屋城(2)

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【家康の城へ】乱世を生き抜く知略で築いた名古屋城(2)

徳川美術館の第1展示室。技術の粋を集めた武具の美しさに魅了される

 

家康の遺品を守る美術館

【家康の城へ】乱世を生き抜く知略で築いた名古屋城(1)から続く

名古屋城から観光ルートバス「メーグル」に乗って徳川美術館に行く。尾張徳川家に伝わる宝物を後世に伝えるため1935(昭和10)年に開設された美術館で、2代当主・光友の隠居所だった大曽根別邸跡地に立つ。現館長は尾張徳川家22代当主の徳川義崇(よしたか)氏だ。

1616(元和2)年、家康が隠居所の駿府城で亡くなると、御三家(尾張・紀伊・水戸)に遺品が分け与えられた。その際に義直が受け継いだ家康の遺品を含め、数々の大名道具を展示している。

「中でも刀剣は日本トップクラスの質と量を誇ります。入れ替えながら展示している刀剣の中には、家康の愛刀・物吉貞宗(ものよしさだむね)があり、これを帯びて出陣すると必ず勝利したと伝わる縁起の良い脇指(わきざし)です」と学芸員の薄田大輔さん。家康の側室・お亀の方の尽力で息子の義直に譲られ、尾張徳川家の家宝になったとか。

日本の自然景観を凝縮したような徳川園。ガーデンレストランもある

隣接の徳川園も大曽根屋敷を起源とする約7000坪の池泉回遊式の日本庭園で、滝や草花を見ながら散策すると往時の風雅に包まれていく。

260年続いた平和な江戸時代に開花したのは、大名文化だけではない。庶民の文化も然(しか)りだ。「天下は一人の天下にあらず」。名古屋城でガイドさんから聞いた家康の遺言が、ふと頭に浮かんだ。天下とはすべての人のものであり、一人の独裁者のものではない。乱世を生きた先人たちを知る旅は、今の時代にこそ意味がありそうだ。

文/北浦雅子 写真/宮川 透

1日限定30食の「家康御膳」(販売休止期間あり)

徳川美術館

家康の遺品を中心に尾張徳川家に伝わる名品の数々を展示。2023年1月4日〜29日は大名文化を彩った文房具を紹介する企画展「徳川文房博」を開催。敷地内の料理店・宝善亭では1月8日から家康が好んだと伝わる食材を使った「家康御膳」(3300円、要予約)を徳川家紋の塗りの器で提供する。

■10時〜16時30分/月曜(祝日の場合は翌日)休、年末年始休/1400円/中央線大曽根駅から徒歩10分、または名古屋駅から観光ルートバス37分の徳川園・徳川美術館・蓬左文庫下車すぐ/TEL:052-935-6262

※掲載時のデータです。

 

風格のある黒門をくぐると左手に徳川園、正面に徳川美術館がある

徳川園

徳川光友の大曽根屋敷を起源とした日本庭園。落差6㍍の三段の滝や「檜造り」の橋、多彩な植物や茶室などがある。1900(明治33)年完成の入り口の黒門は、尾張徳川家の遺構。

■9時30分〜17時/月曜(祝日の場合は翌日)休、年末年始休/300円/交通は徳川美術館と同じ/TEL:052-935-8988

※掲載時のデータです。

 

練香を気軽に体験できる「千年菊方体験キット KUN.NERI-KOH」3300円

お香の春香堂

1921(大正10)年創業のお香と線香の専門店。香の原料となる粉末を練り合わせて丸薬状にした練香(ねりこう)もある。家康が好んだとされる香りを文献から読み解き再現した練香「千年菊方」も好評だ。家康ゆかりの寺・大須観音にも近く町歩きも楽しめる。

■9時〜18時(日曜、祝日は10時〜)/年末年始休/地下鉄鶴舞線大須観音駅から徒歩5分/TEL:052-231-0650

※掲載時のデータです。

 

 

江戸時代の風情漂う義直ゾーン。食べ歩きも楽しい

金シャチ横丁

本丸御殿復元を機にオープンした大型飲食施設。名古屋城正門側は味噌煮込みうどんなど伝統的な「なごやめし」の店が並ぶ「義直ゾーン」。東門側は麺類や創作料理など新進気鋭の店を集めた「宗春ゾーン」。えびせんべいや地酒の店もあり土産にも最適。

■営業時間・定休日は店舗により異なる/年末年始休/名古屋駅から地下鉄東山線5分の栄駅で名城線に乗り換え3分、市役所(名古屋城)駅下車、徒歩10分。宗春ゾーンはすぐ。または観光ルートバスメーグルの名古屋城下車すぐ。宗春ゾーンは徒歩10分/TEL:052-951-0788(金シャチ横丁事務局)

※掲載時のデータです。


名古屋城

■御城印:あり(300円)
■入城:9時〜16時30分(本丸御殿・西の丸御蔵城宝館への入場は〜16時)/12月29日〜元日休/観覧料500円
■交通:地下鉄名城線市役所駅から5分(1月4日〜名古屋城駅に名称変更)または観光ルートバスメーグル名古屋城からすぐ
■TEL:052-231-1700(名古屋市観光文化交流局)

※掲載時のデータです。

【家康メモ】

名護屋城は豊臣方を牽制する城だった。関ヶ原の合戦に勝利した徳川家康は、大坂の豊臣家に対抗するため1610(慶長15)年に名古屋城の築城を開始する。拠点としていた清須城一帯は水害が多発するなどの弱点があり、堅固な地盤の熱田台地に遷府を決めた。

この遷府は「清須越(ごし)」と呼ばれ、築城に関わる者や武士や町人、寺社などを町名ごと移転させる家康の一大プロジェクトだった。1612(慶長17)年に天守が竣工し、3年後に本丸御殿が完成。尾張徳川家初代当主・徳川義直の居城となった名古屋城を核に城下は発展を遂げる。

 

(出典:「旅行読売」2023年2月号)

(Web掲載:2023年5月31日)

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Writer

北浦雅子 さん

和歌山の海辺生まれで、漁師の孫。海人族の血を引くためか旅好き。広告コピーやインタビューなど何でもやってきた野良ライターだが、「旅しか書かない」と開き直って旅行ライターを名乗る。紀伊半島の端っこ、業界の隅っこにひっそり生息しつつ、デザイナーと2人で出版レーベル「道音舎」を運営している。https://pub.michi-oto.com/

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