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【青春18きっぷでできること】乗り換え不要の長距離普通列車で、高尾駅から長野駅まで245キロ(1)

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【青春18きっぷでできること】乗り換え不要の長距離普通列車で、高尾駅から長野駅まで245キロ(1)

中央線高尾―相模湖駅間を走る高尾発長野行き普通列車(写真/伊藤岳志)

 

青春18きっぷを利用すれば片道2410円。2760円お得!

いわゆる「普通列車」に乗るにしては、心地良い緊張感が走った。高尾駅発14時9分、長野行き。これから4時間以上、乗り換えなしで普通列車に座り続けるという稀有な体験を前に、期待と緊張が交錯する不思議な感情が湧き起こった。

「441M」の列車番号が付けられたこの列車は、1日1本だけ高尾駅から長野駅まで直通する普通列車で、鉄道ファンの間ではよく知られた存在だ。245キロを走り、55の駅に止まる。なぜか長野発高尾行きは存在しない。ちなみに「441M」は、1980年代に新宿駅と長野駅を結んでいた夜行普通列車と同じ番号という。

青春18きっぷを使えば運賃もお得だ。「各駅停車の旅に浸る」という18きっぷの原点を体感できる。意を決し、高尾駅に向かった。

高尾駅。1927年に建てられた現在の駅舎は、「関東の駅百選」に認定されている
ホームで出発を待つ「441M」列車

車内も車窓も時を追って変わりゆく

高尾駅を出発した6両編成の列車は、思いのほか体感速度が速い。奥多摩の森や木々が、特急列車から何度も見ているそれと同じような感覚で車窓を流れていった。後で調べると、表定速度(運転区間の距離÷運転時間〈走行時間+停車時間〉)が時速50キロを超えるという、長距離普通列車では全国でもトップクラスの俊足らしい。途中で特急列車に追い越されるのは1度だけだ。

富士急行線が分岐する大月駅を過ぎ、新大日影トンネルを抜けると甲府盆地が開けて気分が高揚。出発してから約1時間が経過。ようやく甲州だ。高尾駅に併設する一言堂(いちげんどう)で買っておいたおにぎりを食べ、旅行気分を盛り上げる。一言堂はパン屋さんだが、地元の主婦が作るおにぎりも人気だ。普通列車で駅弁を開けるのはちょっと憚はばかられるので、おにぎり程度がちょうどいい。

高尾駅にある一言堂のおにぎりは鮭(230円)など。 本社は島根県にあるが旧大社駅と高尾駅の設計者が同じことからここに出店
山梨県大月市の鳥沢-猿橋駅間、新桂川にかかる猿橋橋梁は列車の撮影ポイントとして知られる。車窓に最初に現れる開放的な景色だ

盆地の先に横たわる南アルプスの山並みは、列車が進むに連れてゆっくり山容を変える。甲府駅や韮崎駅で学校帰りの高校生らが乗り込んで車内は活気が満ちてきた。進行方向右手正面に八ヶ岳、後方には富士山と車窓もにぎわうが、彼ら、彼女らにはきっと見慣れた風景。車窓に目もくれずおしゃべりに興じている。そんな日常の風景を目にできるのも、各駅停車の旅ならではだ。

文/渡辺貴由 写真/齋藤雄輝

 

【青春18きっぷでできること】乗り換え不要の長距離普通列車で、高尾駅から長野駅まで245㌔(2)へ続く

 

甲府盆地ではブドウや桃の果樹園と盆地、その向こうにそびえる南アルプスの眺めが続く
韮崎駅辺りから八ヶ岳の眺望が楽しめる。小淵沢駅の先にある富士見駅は中央線で最も標高が高い(955.2メートル)
新府駅辺りから右手後方を見ると、富士山が雲の上に頭を出していた。夏は空気が濁りがちだが期待したい

※上記モデルコースの交通費:青春18きっぷ1回利用(2410円)で、2760円お得。


※掲載時のデータです。

(出展:「旅行読売」2023年7月号)

(Web掲載:2023年8月3日)

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Writer

渡辺貴由 さん

栃木県栃木市生まれ。旅行情報誌制作に30年近く携わり、全国各地を取材。現在、月刊「旅行読売」編集部副編集長。プライベートではスケジュールに従った「旅行」より、行き当たりばったりの「旅」が好き。温泉が好きだが、硫黄泉が苦手なのが玉に瑕(きず)。自宅では愛犬チワワに癒やされる日々。

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