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【青春18きっぷでできること】湿原のトロッコ列車と、ひと駅37キロの車窓に見る北の鉄路の栄枯盛衰(1)

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【青春18きっぷでできること】湿原のトロッコ列車と、ひと駅37キロの車窓に見る北の鉄路の栄枯盛衰(1)

釧路川沿いに広がる湿原の中をガタンゴトンとのんびり走るくしろ湿原ノロッコ号(写真/伊藤岳志)

 

爽やかな夏風に吹かれ、ノロッコ号で北へ

雪の中で鳴くタンチョウを、テレビで見たことがある。クルルゥッと澄んだ声を響かせる背後で、SLが煙を上げながら走っていた。その光景から冬の渡り鳥と思っていたが、釧路湿原周辺に一年中いる留鳥(りゅうちょう)らしい。SLのほうは冬の臨時列車で、春から秋にはディーゼル機関車が牽引(けんいん)するくしろ湿原ノロッコ号が走る。タンチョウがいる夏の道東を列車で旅してみようと思い立った。

家族連れやグループに交じり、釧路駅で入線を待つ。やってきたのは重厚な国鉄DE10形ディーゼル機関車。客車4両のうち3両は全席指定の展望車で、川側が6人掛けのボックス席、山側が2人掛けのベンチシートという観光仕様だ。自由席車両は青春18きっぷだけで乗ることができるが、湿原を眺めるなら指定席を予約しておきたい。

対岸の湿原をよく見ているとエゾシカやタンチョウが見つかることも(写真/伊藤岳志)
これほど川に近づけるのは列車ならでは(写真/伊藤岳志)

鳴り響く警笛とともに発車した列車はゆっくりと進む。釧路川の治水に関する車内放送が流れる岩保木(いわぼっき)水門あたりから釧路湿原国立公園内に入る。ヨシやスゲとハンノキ林が作り出す荒涼とした景色、窓から吹き込む風が心地いい。対岸は人が踏み込めない特別保護地区で、これほど近くに見られるのは鉄道だからこそ。

塘路駅で降り、昼食は駅前のボブズバーガーでテイクアウト。すぐそばにある展望台でノロッコ号や湿原を眺めながらハンバーガーを頬張った。その上空を、純白と黒の翼を広げたタンチョウが2羽、優雅に飛び去っていくのが見えた。

文/春日明子

ジューシーなパテがおいしい

ボブズバーガー

アメリカンなハンバーガーショップ

2022年4月に開店した店は、バイク好きの夫婦がDIYで仕上げたアメリカンスタイルの内装。一番人気のボブズバーガー800円(コンボセット+500円)は、ステーキソース風のボブズソースをかけたパテとたっぷりのレタス、厚切りトマトを挟んだ満足感あるひと品。

■11時〜17時/火曜・第3月曜(祝日の場合は翌平日)・年末年始休/塘路駅からすぐ/標茶町塘路北7線49-7/TEL:090-8897-1193

 


写真/松尾 諭

くしろ湿原ノロッコ号

毎年4月下旬〜10月上旬に1日1〜2往復、釧路―塘路(一部は川湯温泉)間を運転する臨時列車。2号車には限定グッズなどの販売カウンターがあり、今年は標茶(しべちゃ)町のクラフトビールや釧路市のご当地サイダーなど沿線の特産品が新登場。3号車はバリアフリー仕様、1〜3号車にはトイレもある。

■ 運転区間:釧路―塘路(6月10日と10月7日は釧路―川湯温泉)
■ 運転期間:5月27日〜6月18日、6月22日〜9月10日、9月14日〜10月9日
■ 料金:釧路―塘路640円 ※青春18きっぷ利用可能(指定席券は別途840円)

 

【青春18きっぷでできること】湿原のトロッコ列車と、ひと駅37キロの車窓に見る北の鉄路の栄枯盛衰(2)へ続く。

※すべて掲載時のデータです

(出典:「旅行読売」2023年7月号)

(Web掲載:2023年7月21日)

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Writer

春日明子 さん

1979年生まれ、神奈川県出身。会社員時代に釣りに目覚め、いつの間にか釣り新聞の編集者となる。編集プロダクションにて旅行雑誌やコーヒー専門誌、機内誌を中心に編集・執筆活動を続けたのち、鮭釣りに訪れた北海道で人生の伴侶を釣り上げ、2016年に別海町へ移住。酪農地帯の真ん中で原稿を書く。

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