【青春18きっぷでできること】東海道線、駅弁道中。定番、新作、食べ尽くし(2)
「家康公の駿河御膳」(2000円、東海軒)。タイの焼き身、なす味噌(みそ)、黒はんぺんの磯辺揚げ、桜海老(サクラエビ)煮、わさび漬け、煮物、安倍川餅などを詰めた豪華な一品
交通費を節約して豪華な駅弁を味わう
【18きっぷでできること】東海道線、駅弁道中。定番、新作、食べ尽くし(1)から続く
翌日は静岡駅の「家康公の駿河御膳」からスタート。1個2000円と値は張るが、青春18きっぷで交通費を抑えられるので贅沢(ぜいたく)できる。家康が晩年を過ごした駿府(すんぷ)城公園まで歩き、いざ開封。茶飯の上には葵(あおい)の紋をかたどった小袋入りの海苔(のり)がのせてあった。どこか違和感を抱きよく見ると、“逆さ葵”だ。
この駅弁は家康を祀(まつ)る久能山(くのうざん)東照宮にも献上され、海苔は社殿の逆さ葵を模している。逆さ葵は、完成は滅びの始まりという考えから、あえて未完にしてあるそう。おかずは家康が好んで食べたと考えられる食材がふんだんに使われている。
静岡といえば、うなぎもお忘れなく
高級駅弁を食べて、気が大きくなったところで、次の駅弁はうなぎにしよう。JR新所原駅に隣接する天竜浜名湖鉄道新所原駅構内の「浜名湖鰻うなぎ専門店 やまよし」で「うなぎ弁当 一本入り」を求めた。注文後に調理するので10分ほどかかる。
「うちは関西風なので蒸さないけれど、丁寧に骨切りして、じっくり焼くから小骨が気にならないのよ」
女将さんとうなぎ談義をしている間に駅弁が完成。冷めないようにと新聞紙に包んで渡してくれた。早速駅前のベンチに座り、うなぎにかぶりつく。なるほど、小骨を感じずに完食できた。
最後は名古屋で鶏か?うなぎか?
満腹状態で電車に乗ると、まぶたが下がり出す。気付くと名古屋駅に到着だ。最後の駅弁は「百年の天下とり御飯」に決めた。とりは“鶏”なのだが“天下とり”になると、天下人の家康に通じるではないか。
製造元の松浦商店は明治期の料亭から始まり、伝統の技を継承している。思わず唸ったのが卵巻きだ。薄い卵焼きを幾重にも重ね、ふっくらと仕上げてあった。おかずは名古屋コーチンの歯応えを感じられる照焼きをはじめ、つくね串、アスパラ巻き、燻製ハムなどとまさに鶏三昧で、たまらなくビールが欲しくなった。
今回も食べたな〜。そして実感した。旅先で食べる駅弁は格別だ。英気を養ったところで、明日は名古屋城でも見学して帰ろうか。
文・写真/内田 晃
東海軒 TEL:054-287-5171
浜名湖鰻専門店 やまよし TEL:053-577-4181
松浦商店 TEL:052-452-4506
※掲載時のデータです。
(出展:「旅行読売」2023年7月号)
(Web掲載:2023年6月22日)