駅舎のある風景 美袋駅【伯備線】
大正のたたずまいを今に残す文化財の木造駅舎
陰陽連絡線の一路線として開通した伯備(はくび)線には、大正〜昭和の面影を残す駅舎がいくつもある。その一つ、一時終点だった美袋(みなぎ)駅を訪ねた。
駅の近くに、樹齢約500年の市の天然記念物「作原(さくばら)の椋(むく)の古木(こぼく)」がある。かつてこの辺りは備中松山(びっちゅうまつやま)城下へ至る松山往来が通り、この古木が一里塚だったという。
2008年に登録有形文化財に登録された開業当時の駅本屋は、瓦葺(かわらぶ)きの切り妻屋根に下見板(したみいた)張り壁で、窓枠以外はほぼ往時の姿を今に残している。現在、総社市が管理を行い、駅前には懐かしい丸型ポストも置かれた。
伯備線では、日本初の振り子式特急車両の381系やEF64形電気機関車など、国鉄時代の銘車両たちが最後に活躍する姿を見せている。
カメラ片手に鉄道を追いかけた昔の思い出が、走馬灯(そうまとう)のように頭をよぎっていった。
文・写真/越 信行
倉敷―伯耆(ほうき)大山駅を結ぶ伯備線は1928年に全線開業。美袋駅は19254年開業。倉敷駅から25分
※「駅舎のある風景」は今回が最終回です。
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(出典:「旅行読売」2022年10月号)
(Web掲載:2023年8月10日)