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【出港!海の旅】クイーンコーラルクロス 沖縄航路乗船記(1)

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【出港!海の旅】クイーンコーラルクロス 沖縄航路乗船記(1)

2021年11月にデビューした最新船「クイーンコーラルクロス」で沖縄へ

本土と沖縄を結ぶ唯一の航路で時間の流れを楽しむ

鹿児島から沖縄行きの船に乗る。その名は「クイーンコーラルクロス」。全長145メートル、約8000トン、653人乗りのこの船は、マリックスラインの新造船で、鹿児島と那覇を25時間で結ぶ。マリックスラインはほかに1隻、そしてマルエーフェリーが2隻の貨客船を同航路に就航させている。両社の4隻はローテーションを組んで運航しているので、毎日船で沖縄へ行ける。

かつて、本土と沖縄を結ぶ旅客航路はいくつもあった。しかし飛行機の運賃が手の届くものになると旅客数はみるみる減り、船は貨物のみ取り扱うようになる。2014年末、マルエーフェリーの東京~那覇航路もそれに続く。この航路には「クルーズフェリー飛龍21」が就航していた。もともと有村産業の名古屋~大阪~那覇~宮古島~石垣島~台湾(基隆・高雄)という国際航路に就航していた船だ。台湾まで行く船客も那覇や石垣島での一時下船が可能で、私は停泊中に那覇で国際通りや首里城(しゅりじょう)見学、石垣で小型船に乗って竹富島への小旅行を楽しんだことがある。それは現在、外国客船によって横浜および神戸発着で行われている沖縄・台湾クルーズのはしりのようなものであった。しかしそんな魅惑の台湾航路も2008年で休止した。

その後、マルエーフェリーは大阪・神戸~那覇航路でも旅客の取り扱いを停止し、いま沖縄への船旅ができるのは鹿児島発着のみとなった。ただ、大阪から鹿児島の志布志(しぶし)へ「さんふらわあ」で行き、乗客無料の連絡バス「さんふらわあライナー」で鹿児島に移動して沖縄行きフェリーに乗り継ぐことで、かつての沖縄への船旅ムードを味わうことはできる。私も2021年の晩秋に、そのルートで鹿児島に来た。

鹿児島新港を出港。25時間にわたる沖縄への船旅の幕開けだ
雄大な桜島を背景に、フェリーあまみ(奄美海運)が航行する

カジュアルクルーズ船の雰囲気が漂う2021年就航の最新船

沖縄航路で最新船の「クイーンコーラルクロス」は、カジュアルクルーズ船の雰囲気が漂う。乗船すると2層吹き抜けのエントランスが目前に広がり、船首には操舵室にいる気分を味わえるビューシートがある。客室はフェリーの代名詞のような乗客が雑魚寝する2等室(※頭の部分には仕切りがある)から、プライバシーを重視した個室感覚のベッドルーム2等寝台Aやバス・トイレ付きの特等室まで4タイプある。私はクルーズムードを満喫するために1等室シングルを選んだ。6室のみのレアなキャビンはテレビ、冷蔵庫はもちろん、洗面台や温水洗浄便座付きトイレまで備える。こんな豪華な1人部屋は本土の長距離フェリーでもあまりお目にかかれない。

2層吹き抜けのエントランスは天井が高く開放感がある
沖縄航路で、船首にビューシートがあるのはこの船だけ
「ワンランク上の南海クルーズ」を演出できる1等室シングルは6室。ほかに2人用が4室、コネクティング可能なツインルームも2室備わる

18時、桜島に見送られるように鹿児島を出港。まずはレストランでディナーだ。限定10食のマリックス御膳は鹿児島名産の黒豚とんかつと沖縄そばのセット。まるでこの船旅を象徴するようなグルメではないか。自動販売機にはオリオンビールがあったので、こちらを購入。沖縄気分を先取りだ。

限定10食のマリックス御膳1800円。このほか、1週間前までに要予約のクイーンコーラル御膳1600円もある
自動販売機はソフトドリンク、アルコール飲料、おつまみ類がそろう

食後、デッキから黄昏(たそがれ)る知林(ちりん)ヶ島、指宿(いぶすき)の街灯り、薩摩富士の異名を持つ開聞岳(かいもんだけ)の美しい山容をめでる。錦江(きんこう)湾クルーズの締めくくりは本土最南端の佐多岬(さたみさき)。空はすっかり暗くなっていたが、その灯台の明かりで本土が海に果てるのを知る。22時に再びデッキに出ると、屋久島の宮之浦岳の黒い姿が浮かんでいた。

文・写真/カナマル トモヨシ(航海作家)


【出港!海の旅】クイーンコーラルクロス 沖縄航路乗船記(2) へ続く

御船印を集めよう

「御船印」は御朱印の船バージョンの書き置きの紙で、2021年から日本旅客船協会の公認事業として始まり、全国の船会社や海洋博物館が発行している。「御船印」(300円~)とこれを貼る「船印帳」(2200円)は、プロジェクトに参加している船会社の発着地ターミナルや売店などで販売。集めた印の枚数によって「御船印マイスター」に認定される制度もある。参加する船会社は、予定のものを含めると100社以上。詳細は公式サイトを参照。


クイーンコーラルクロス

◉運航ダイヤ
鹿児島18:00発 → 翌5:00着 名瀬(奄美大島)5:50発 → 那覇19:00着
那覇7:00発 → 20:30着 名瀬(奄美大島)21:20発 → 鹿児島 翌8:30着

◉料金(鹿児島~那覇)
特等           3万7200円+BAF1470円
1等             2万9760円+BAF1470円
2等寝台      2万1160円+BAF1470円
2等             1万4880円+BAF1470円
自動車    3メートル以上~4メートル未満7万800円+BAF7350円
※BAF(燃料油価格変動調整金)は2023年5月2日乗船分からの金額で、3か月毎に変動する可能性があります。※そのほかの区間の運賃や自動車運賃などについてはホームページをご確認ください。

◉アクセス
鹿児島新港=九州新幹線鹿児島中央駅からバス20分(タクシー15分)、または鹿児島空港からタクシー1時間/九州道鹿児島ICから6キロ
那覇港=ゆいレール旭橋駅から徒歩10分/那覇空港から車で5キロ、沖縄道那覇ICから県道82号経由8キロ

◉問い合わせ マリックスライン鹿児島 TEL:099-225-1551
※掲載時のデータです。

 

(出典:「旅行読売」2023年8月号)
(Web掲載:2023年8月30日)

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