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【私の街の路面電車】100年の歴史に「日本初」がいろいろ 熊本市電(2)

場所
> 熊本市
【私の街の路面電車】100年の歴史に「日本初」がいろいろ 熊本市電(2)

熊本城天守を遠望する通町筋停留場

 

古き良きものを守り伝える精神も継承

【私の街の路面電車】100年の歴史に「日本初」がいろいろ 熊本市電(1)から続く

夏目漱石が旧制第五高等学校の教師として熊本に赴任したのは熊本市電開業前で、漱石が市電に乗ったわけではないが、上熊本駅前には漱石の銅像が立ち、大正初期に建てられた駅舎の前面と屋根部分のみが市電のホームに移築されている。近くの通りは「吾輩通り」と名付けられ、夏目漱石内坪井旧居などもある。漱石ファンなら必見の場所だ。

熊本市電上熊本駅舎と夏目漱石像

水前寺成趣園や夏目漱石大江(第三)旧居などを散策

上熊本からは市電で繁華街を抜け、水前寺成趣(じょうしゅ)園(水前寺公園)周辺を散策。公園東の住宅街に夏目漱石大江(第三)旧居があると知り、ここでも漱石の足跡に触れられた。当時まだ小説は書いていなかったが、正岡子規の指導で俳句をたしなみ、生涯で詠んだ約2500句のうち約1000句が熊本時代のものという。漱石はロンドンに留学するまでの4年3か月を熊本で過ごし、その間に6回も転居した。漱石もまた「わさもん」だったのだろうか。

旧居の展示物に、熊本地震で全壊したジェーンズ邸の写真があった。その無残な姿に唖然(あぜん)としたが、少し場所を移して再建され、9月1日から公開される。思えば熊本城も甚大な被害から復興の道をたどっている。新しいものばかりを好むわけではない。古いものを守り、たとえ壊れても復活させる。熊本市民の底知れないエネルギーを感じずにいられない。OMO5熊本 by 星野リゾートが実施している町歩きツアーに参加すると、そのエネルギーにもっと触れることができる。

ちなみに小説『坊っちゃん』の最後の段落には、主人公は路面電車の会社に技術者として転職したと記されている。漱石と路面電車。この二つがいつの間にかつながり、不思議な感覚を覚えた旅になった。

文/渡辺貴由 写真/齋藤雄輝

 

■モデルコース

<熊本駅前>
↓ 12分
<辛島町>
↓ 16分
<上熊本>
周辺散策
↓ 38分
<水前寺公園>
水前寺成趣園、ジェーンズ邸、夏目漱石大江(第三)旧居
<市立体育館前>
↓ 18分
<熊本城・市役所前>
熊本城、OMO5熊本 by 星野リゾート

 

熊本市電沿線の見どころ

水前寺成趣園(水前寺公園)

熊本藩細川氏の初代藩主・細川忠利(ただとし)が1636年頃から築いた水前寺御地茶屋が始まり。その後、築山などが作られ現在の形となった。阿蘇の伏流水が湧く園内は「水の都・熊本」の象徴でもある。国の名所・史跡。

■8時~16時30分(北門は9時30分~16時)/無休/400円/水前寺公園停留場から徒歩3分/℡:096-383-0074

※掲載時のデータです。

 

ジェーンズ邸

1871年に洋学校教師館として建てられた木造2階建て、県内最古の洋館。この時に招かれたアメリカ人教師・ジェーンズは、西洋風の教育で多くの人材を育てた。2016年の熊本地震で全壊したが、旧市立体育館跡の公園に再建され、9月1日から公開予定。

■開館時間等は未定/市立体育館前停留場からすぐ、水前寺公園停留場から徒歩3分/℡:096-328-2393(熊本市観光政策課)

※掲載時のデータです。

 

夏目漱石大江(第三)旧居

漱石は熊本滞在中に6か所の家に住んだ。3番目のこの旧居は大江村(現在の熊本市中央区新屋敷)にあったものを移築、復元。この家から小説『草枕』の題材になった玉名市の小お天あま温泉への旅に出発した。

■9時~16時30分/月曜(祝日の場合は翌日)休、年末年始休/無料/市立体育館前停留場から徒歩7分/℡:096-385-2266

※掲載時のデータです。

 

熊本城

加藤清正が1607年に築城。熊本地震により甚大な被害を受けたが、復旧に向けた工事が進行中。天守は2021年に復旧が完了し、内部を公開中。天守内では、時代を追って城下の様子などを解説。南口から特別見学通路を通って本丸御殿、天守まで行ける。現在、宇土櫓(うとやぐら、五階櫓、国の重要文化財)の解体保存工事が進められている。

■9時~16時30分。平日・土曜は南口券売所からの入出場のみ、日曜・祝日は北口券売所からも入出場可能/12月29日〜31日休(変更の場合あり)/800円/熊本城・市役所前停留場から徒歩10分/℡:096-223-5011

※掲載時のデータです。

 

OMO5熊本 by 星野リゾートを旅の拠点に

熊本市内散策に便利なのが、通町筋停留場や下通・上通商店街がすぐ、熊本一の繁華街に近いOMO5熊本 by 星野リゾートだ。今年4月25日にオープンしたばかりで、コンセプトは「わさラッシュ! 城下マチ」。「わさラッシュ」は、熊本の言葉で新しいもの好きの人を表す「わさもん」に由来。城下町の伝統と、次々と新しいものが生まれる熊本のエネルギーを体感できる「ご近所アクティビティ」も用意している。

施設は3階~11階にあり、3階はカフェ、フリースペース、ご近所MAPなどがある「OMOベース」。城の郭をイメージした「凸凹(でこぼこ)テラス」からは街のにぎわいや路面電車を見下ろせ、熊本城を遠望。街の活気や匂いが伝わってくる。

ホテルから徒歩圏内には100軒以上のバーがあり、OMOベースでは毎日17時~18時に近所のバー直伝のカクテルの試飲もできる。

■予約・問い合わせはTEL050-3134-8095(OMO予約センター)へ。

朝食は「ホワイトシチューのキューブトースト れんこんマスタード」(サラダ、スープ、ドリンク付き)など5種から選べる。1250円
上段がベッドルーム、下段がリビングスペースの「やぐらルーム」。定員4人、室料2万1000円~
ベッドの間に円卓をイメージしたテーブルを置いた「えんたくルーム」。定員2人、室料1万8000円~。ほかに定員6人の「OMOハウス」(室料4万3200円~)など、全160室がある

熊本市電

●開業:1924年
●営業距離:12.1km
●停留場数:35
●「熊本市電1日乗車券」:500円。車内で販売。紙券のほかモバイルチケットもある。施設利用割引券付き
●「モバイル24時間乗車券」:600円。スマートフォンで専用アプリをダウンロードして購入。施設割引あり
●問い合わせ:熊本市交通局TEL096-361-5233

※掲載時のデータです。

 

(出典:「旅行読売」2023年9月号)

(Web掲載:2023年9月4日)

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Writer

渡辺貴由 さん

栃木県栃木市生まれ。旅行情報誌制作に30年近く携わり、全国各地を取材。現在、月刊「旅行読売」編集部副編集長。プライベートではスケジュールに従った「旅行」より、行き当たりばったりの「旅」が好き。温泉が好きだが、硫黄泉が苦手なのが玉に瑕(きず)。自宅では愛犬チワワに癒やされる日々。

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